2008 Fiscal Year Annual Research Report
歴史批判と本文批評:聖書資料説の起源と「批判」概念の発生
Project/Area Number |
20520079
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
手島 勲矢 Doshisha University, 神学部, 教授 (80330140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 玄吾 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教 (70467439)
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Keywords | ヘブライ語聖書 / イタリヤ / ユダヤ教 / キリスト教 / ルネッサンス / フランス |
Research Abstract |
20年度の研究の実質的な内容は、当初の計画と異なり、リシャール・シモンのテキストの新旧(Pierre Gibert 2008, Slatkine Reprint1971)を手に入れることが2008年12月末となったので、英語版リシャール・シモン第一部第二部のOCR作成を先に進め、それらのテキストの人名のプレリミナリーな調査につきる。ただ、大きな収穫は、リシャール・シモンのPUBLIC WRITER説の出自が16世紀初頭アヴァルバネルのサムエル記注解にあるということを突き止めたことである。これは、OCR作成によって可能になった知見だが、この発見はスピノザの聖書解釈が資料説とは異なる方向性をとっていたことの独自性が、いよいよ重大な特徴として注目される必要があることを示唆している。なぜなら、スピノザは多分アヴァルバネルを知っていたと思われるから。この点は、二年度の重要な研究上の注意点となるだろう。キリスト教起源の歴史批判として資料説の問題を考えていた著者にとって、リシャール・シモンがアヴァルバネルの注解に学んだ発想という可能性は、今までの研究上の見込みを根本的に見直す必要性のあることも示唆するものである。したがって、初期の計画で考えていたよりも15・16世紀に注目することに精力をそそぎたい。伊藤玄吾氏はフランスにおけるリシャール・シモンの重要性が新しい視点から再認識されている状況報告をまとめた。今後の研究展開では、フランス人文学とイタリヤ人文学の交流の文脈で、アヴァルバネルの聖書注解に歴史批判の度合いを見定めることにも注視していきたい。
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Research Products
(3 results)