2011 Fiscal Year Annual Research Report
歴史批判と本文批評:聖書資料説の起源と「批判」概念の発生
Project/Area Number |
20520079
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
伊藤 玄吾 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 助教 (70467439)
|
Keywords | 宗教哲学 / ヘブライ語聖書 / ラビ・ユダヤ教 / クリスチャン・ヘブライスト / 宗教改革 / バルーフ・スピノザ / リシャール・シモン / <個>有名詞 |
Research Abstract |
本研究の中心内容は、リシャール・シモンの著作『旧約聖書の批判的歴史』Histoire critique du Vieux Testament(1678;HCVT)における聖書研究の方法論の成立の過程を追うとともに、バルーフ・スピノザ『神学政治論』Tractatus Theologico-Politicus(1670:TTP)の比較を行うことにあるが、平成23年度は主に以下に示す研究を中心に行った。 第一に、リシャール・シモンのHCVTの執筆の前提となった16世紀から17世紀にかけての聖書研究をめぐる宗教的、思想的、政治的背景をより明らかにする作業を行ない、スピノザとの関連がどこにおいて生じて来るかをより詳細に検討した。また、シモンが所蔵していた中世のヘブライ語写本の所在をフランスにおいて調査し、そのほとんどが現在はディエップ市メディアテークおよびルーアン市立図書館の貴重書部に所蔵されていることを確認、さらなる詳細なシモン関連の書誌作りを進めた。 第二に、シモンの聖書研究の方法論について、「霊感(inspiration)についての書簡」というシモンの長大な論文を翻訳するとともに、そこに見られるスピノサ批判を再検討する作業を行ない、シモンの本文批評における問題解決へのこだわりを明らかにした。 第三に、イブン・エズラを始めする中世ユダヤ文法学者・哲学者たちの議論における文字と意味、隠喩、普通名詞と<個>有名詞の対立などの重要なテーマがいかにスピノザ、そしてリシャール・シモンの聖書理解と響き合い、または対立しているのかを探る試みを、この問題に詳しい手島勲矢氏の助言なども得つつ行ない始め、今後の研究の深化にむけての道筋をより明確なものにできた。
|
Research Products
(4 results)