2008 Fiscal Year Annual Research Report
印章と刻印のメタファー:西洋中世におけるイメージと視覚性に関する研究
Project/Area Number |
20520083
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木俣 元一 Nagoya University, 大学院・文学研究科, 教授 (00195348)
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Keywords | 西洋中世 / 視覚性 / 印章 / 刻印 / キリスト教 / 美術 |
Research Abstract |
本研究は、印章(seal)の母型(matrix)とその刻印(imprint)という比喩を通じて、西洋中世における「視覚性(visuality)」、すなわち社会的・歴史的・文化的に形成された多様な「視」のあり方について考察しようとするものである。 本年度は、古代から中世盛期にかけて、「機械的複製手段」としての刻印のさまざまな例を探り、この時期の諸テクストに現れる「印章とその刻印」というメタファーについても概観した。古代ギリシアにおいてプラトン『テアイテトス』、アリストテレス『魂について』、ストア派では認識や記憶のモデルとして多用される。こうした状況は古代の印章と刻印が実際にどのように使用され、社会の中でどのような価値をになったのかと関係する点について言及した。それがキリスト教に持ち込まれて、神が信徒に施すキリスト教徒としての徴と見なされる点、不可視の原型と模像(イコン)との関係を説明するモデルとなる点などについても考察を行った。 さらに、リスボン、グルベンキアン美術館所蔵の『ヨハネ黙示録』写本挿絵で画面左上部でマンドルラに包まれた神が両手で抱え持つ金色の印章と、画面右に配されたエルサレムの神殿の垂れ幕に奇跡的に転写されたキリストの聖顔(ウェロニカ)との関係について考察を進めた。
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