2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520095
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
太田 孝彦 Doshisha University, 文学部, 教授 (70098169)
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Keywords | 『画道要訣』 / 狩野安信 / 『山水純全集』 / 韓拙 / 『本朝画史』 / 狩野永納 / 『玉洲画趣』 / 桑山玉洲 |
Research Abstract |
今年度は、課題である「江戸時代のおける絵画の鑑定・評価・価格」の研究を、まず、江戸時代初期の画論書である『画道要訣』が絵画についてどのようなことを述べているかを再確認することから始めた。具体的には著者である狩野安信は彼自身個性的な画風をもつ作例を残しながら個性や才能を重視する「質画」ではなく、手本に縛られた学習に基づく「学画」を何故良しとしたのかを、彼がよりどころとした宋代の韓拙『山水純全集』と比較しながら読みとることであった。周知の流派の延命策としてではない意味を見いだそうとした。型を保持することの意味や型の価値を如何に評価していたかを明らかにすることであった。その時、型通りの様式を継承していた京狩野の画家狩野永納が著した『本朝画史』と比較した。その結果、個性の表現は画格の低下を招くこと、絵画は何よりも確かな技術に支えられていることを尊重する絵画観が「学画」の背景にあることを認識した。それは乱暴でも確かな技術によって生み出されていた絢爛で豪華な雰囲気をたたえていた桃山絵画が江戸時代になって繊細で瀟洒な画面となり洗練された抒情的なものへと変化したことによって筆法の価値は見失われてしまい、ややもすると弱々しい筆使いに終始する現状への警告であったと考えられる。 そのことを確かめるべく、南画(いわゆる中国の文人画に倣った絵画)をよくする桑山玉洲は画論『玉洲画趣』を読み解き、そこにも「写意」の立場でありながら「画法」(技術)修得を一大事と考える絵画観があることを明らかにした。次年度は、さらに南画家の画論を検討することによって考察を深めたい。
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