2010 Fiscal Year Annual Research Report
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20520095
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
太田 孝彦 同志社大学, 文学部, 教授 (70098169)
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Keywords | 田能村竹田 / 『山中人饒舌』 / 自娯 / 狩野派 / 桑山玉洲 / 『絵事鄙言』 / 技術 / 呉春 |
Research Abstract |
今年度は課題である「江戸時代における絵画の鑑定・評価・価格」の研究を、田能村竹田(1777-1835)が著した『山中人饒舌』を取り上げ、そこで語る南画家の絵画観を明らかにすることから始めた。まず、『山中人饒舌』の語釈と和訳を試みた。彼は中国の画論書-特に董其昌『画禅室随筆』など明清の文人画論-を駆使しながら、当時の画壇の人々が描く姿勢や絵画をつぶさに観察し、個々の画家たちの制作態度と彼らが目指す技術の特質を語っている。彼は絵画は自娯のためにあり、絵画を制作することは自己の精神を画中に臥遊させることを目的とし、そうして描かれた絵画は描いた画家の精神を味わうものであると考えていた。したがって、狩野派の画家たちとは異なるものとして絵画を認識していたことになる。とはいえ、こうした絵画であっても、画家たちの精神が画面に上手く表現されるためには、充分な技術を修得しておくことを求めていた。それは玉洲が『玉洲画趣』や、『絵事鄙言』で語ることと同様の姿勢である。確かな技術で支えられてこそ、絵画は絵画としての価値を持つものとして評価されるべきことを提言する。そうした姿勢が、通俗な画家として立場が異なる南蘋派にならった画家たちの中でも応挙やその門下に移った蕪村の弟子呉春の絵画を評価することになったといえる。ややもすれば個性が尊ばれ、技術が低く見られている現代芸術への警鐘といえるかもしれない。
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