2010 Fiscal Year Annual Research Report
西安碑林博物館所蔵碑誌彫飾文様6-10世紀基準作例の造形分析と系統化の基礎研究
Project/Area Number |
20520099
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
山本 謙治 阪南大学, 国際観光学部, 教授 (30309372)
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Keywords | 文様史 / 石彫 / 碑石 / モティーフ系統 / 空間分割 / 配置構成 / 文様構成 / 文様構造 |
Research Abstract |
<研究の目的>西安碑林博物館は1993年に旧陜西省博物館より独立した中国最大規模の石刻博物館で、274種3500以上の石刻品を所蔵している。このうち碑石・墓誌・墓誌蓋は2000石以上に及ぶが、それらの多くには各時代の優れた装飾文様が施されている。しかしながら従来の日中碑誌研究の対象は銘文に限られ、碑林碑刻文様が本格的な研究対象とされることはなく、著名な10数石の作例を除いては、日中いずれの研究者もその全貌を把握していないのが現状である。装飾文様の施された作例は建築・彫刻・絵画・工芸というほとんどの造形領域に存在し、その作例数が極めて多いということは装飾文様史研究における大きな利点である。しかし、その一方で、制作年代の明確な<基準作例>が乏しいこと、施文領域全体の配置構成が分析できる拓本と、単位文様を分析できる細部写真の両者を合わせた文様資料の蒐集が難しいこと、この2点が装飾文様史研究の大きな妨げとなっている。この点、西安碑林博物館の所蔵する石碑・墓誌・墓誌蓋には多種多様な装飾文様が施されると同時に、碑文・墓誌銘により制作年代が判明するものが多く、いずれも装飾文様史における貴重な<基準作例>となり得るものである。また碑林所蔵作例では、施文された装飾空間全体を考えるための拓本資料と、個々の文様を分析するための細部写真資料という、装飾文様研究に不可欠な二種の文様資料の作成が可能である。こうした日中の研究状況及び碑林博物館所蔵碑誌文様の資料価値を踏まえ、本研究では研究対象を唐代以前に限定し、以下の4点を研究目的となす。 1. 西安碑林博物館との共同調査により、展示碑誌65石、収蔵庫保管碑誌300数石の採拓と細部撮影を行い、これら新規作成資料に基づき、6~10世紀の文様史<基準作例>を選別する。 2. 上記<基準作例>に対して、コンピュータ利用により<装飾空間の形式と分割><文様配置構成><文様構造>の造形分析を行い、データベースを作成する。 3. 中国6~10世紀の文様史を、従来のモティーフ系統分類で断片的に繋いでいくのではなく、上記の具体的な基準作例の造形分析結果に基き、造形的に系統化してその歴史展開を跡付ける。 4. 以上の研究結果に基き、朝鮮・日本の文様作例を東アジア造形史のなかに位置づける。
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