2008 Fiscal Year Annual Research Report
寛政度内裏造営における禁裏絵所預土佐家と復古様式資料に関する研究
Project/Area Number |
20520100
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
岩間 香 Setsunan University, 外国語学部, 教授 (50258084)
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Keywords | 土佐家 / 絵所預 / 寛政度内裏 / 復古様式 / 障壁画 / 絵巻物 / 京都 / 絵図 / 大和絵 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)寛政度内裏造営における復古様式資料の収集と分析、(2)絵所預土佐家の役割を明らかにすることの2点である。3年の研究期間の初年度にあたる本年は、おもに写真資料や文献の収集に努め、それらを整理・分析した。その成果は以下の通りである。 (a)宮内庁書陵部・国立国会図書館・京都府総合資料館において寛政度内裏の関係資料を収集した。とくに禁裏大工の家に伝来した「中井家文書」(中井家蔵)は美術史では未紹介の資料で、この中から寛政度内裏の図面や光格天皇の儀式関係関係資料を見いだした。 (b)土佐光貞が父光芳とともに茶道の千家に入門し、水墨画の茶掛けを描いていることを見いだした。光貞の手がけた寛政度内裏障壁画の中に水墨画の障子絵が含まれている。土佐家が水墨画を描くようになった背景について、茶家との関係という新たな手がかりを得た。 (c)土佐光貞の作品として、群青霞引きの一扇縁取屏風や、有職文様の香合などを各種見いだした。内裏造営以後、復古様式の調度が多数依頼されたためと思われる。光貞の作品は必ずしも古代中世の意匠そのままではないものの、当時は古代風と認識され他の絵師にも影響を与えた。 (d)「御指図御用記」の解読を進めた結果、土佐光貞が内裏障壁画の絵師を選定する状況が明らかになった。土佐家の弟子を名乗り登用された絵師の中には、大坂の絵師が複数含まれており、彼らの画壇における地位向上に土佐家が寄与したことが窺える。 以上の成果は(1)「土佐光貞と不見斎」(『裏千家今日庵歴代』第9巻、2008.10、淡交社)、(2)「寛政度内裏と土佐光貞」(『美術京都』42号、2008.3出版予定京都中央信用金庫)に発表した。
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