2010 Fiscal Year Annual Research Report
寛政度内裏造営における禁裏絵所預土佐家と復古様式資料に関する研究
Project/Area Number |
20520100
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
岩間 香 摂南大学, 外国語学部, 教授 (50258084)
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Keywords | 土佐家 / 絵所預 / 内裏 / 復古 / 障壁画 |
Research Abstract |
寛政度内裏の造営記録である「御指図御用記」(宮内庁書陵部)の読解を進め、そこから新たな問題や資料を発掘した。まず禁裏大工である木子家について「木子文庫」(東京都立中央図書館)の文書を解読した。その結果、内裏造営に関わった木子家は3家あり、その中の木子播磨家が幕府の大工に不満をもつ禁裏に登用されたことを明らかにした。木子播磨は、幕府の大工である中井家の作成した図面のチェックや、公家への技術に関する助言を行った。これらについては別掲の論文を発表した。 また内裏における特殊な儀式空間である倚廬について、近世における変遷を明らかにした。倚廬は天皇の親が没した時に設置される物忌みの空間で、御所の部屋の床を切り下げ、竹や葦簣で仮小屋を作る。寛政度内裏における倚廬の図面を「中井家文書」・「木子文庫」から見出し、紹介した。また諸家の記録類から、近世の後期には倚廬が設営される建物は学問所に固定されたことを明らかにした。これらについても学会で発表し、論文を執筆した。 さらに「大内裏図考證」を著し、復古内裏造営に助言を行った裏松固禅の資料として「泣き不動縁起絵巻」(奈良国立博物館)の撮影・調査を行った。この絵巻物は藤貞幹「好古小録」・裏松固禅「院宮及私第図」(東京国立博物館)の記事などから、固禅が参照したことが推定できる。巻末の極めや絵の細部を観察し、土佐派周辺の作風であることを確認した。また固禅の文から絵所預土佐家に対する固禅の評価も明らかになった。これについては論考を準備中である。 本年は復古様式内裏の造営過程と、完成した内裏に設置された儀式空間を明らかにした。また復古様式の資料である絵巻物についても調査し知見を得ることができた。
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