2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520125
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
藤田 隆則 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 准教授 (20209050)
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Keywords | 音数律 / 謡曲 / 能 / 音曲 / 中世芸能 / 旋律 / 産み字 / ふし |
Research Abstract |
謡曲の作品約50曲をとりあげ、節がついている部分がどのような音数律にもとづいて書かれているかを調査し、さらに、節のついている部分の一句一句に旋律パターンを対応させる作業をおこなった。この作業により、作品ごとの音数律のパターンの特徴、音数律パターンとそこに付与される旋律との関係などを、具体的に考えていくための地盤が整った。この資料をもとにして、能の作品がつくられた時代や作者を考えていくことが、この研究の当初の目標ではあったが、作られた資料をじっくりと眺める時間が、さらに必要である。解釈を加えるのは、今後の課題として残されている。 また、この作業の過程で、作品ごとに小段の利用方法(あるいは組み合わせ)がことなるという、常識に属するあたりまえのことが、実感として、あらためて強く意識された。たとえば、人物が登場する形式の違い(一声で登場するか次第か)などは、音数律や旋律パターンを考慮にいれて再考することで、その違いの意味がより明らかになるのではないか、という問いが新しく浮上してきたのは、この研究の収穫であった。もちろん、明快な解答を与えるのは、未来の課題として残る。 本年度は、上に記した本研究の中心作業に関連して、謡の楽譜(謡本)が、どのような節の記号を使ってきたか、その記号はどのように読まれてきたか、という問題に焦点をあて、考えることになった。その成果として、国内では、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター公開講座『京観世の伝統-記録と記憶から聞こえるもの』において、連続講演をおこない、国外では中国の上海音楽学院や武漢音楽学院において、Transmission of Japanese Buddhist Chant and its Notationという題の英語講演をおこなった。 さらに、初年度から継続しているデータベースの作成にも力をそそいだ。昨年度に一応の完成をみた「観世目次一覧」のバージョンアップをはかった。また、戦前に刊行された雑誌『大観世』の目次データベースも作成したのだが、今年度中のウェブサイト公開にはいたらなかった。
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Research Products
(6 results)