2010 Fiscal Year Annual Research Report
多メディアにおける「らしさ」の変容――表象文化にとって「自然さ」とは何か
Project/Area Number |
20520131
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
北山 研二 成城大学, 文芸学部, 教授 (90143130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一之瀬 正興 成城大学, 文芸学部, 教授 (40003462)
川上 善郎 成城大学, 文芸学部, 教授 (00146268)
村瀬 鋼 成城大学, 文芸学部, 教授 (60279247)
木村 建哉 成城大学, 文芸学部, 専任講師 (10313181)
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Keywords | らしさ / 自然 / リアリティー / 表象 / 物語 / メディア / 風景 / アイデンティティー |
Research Abstract |
平成22年度は、本研究の総括のために理論的研究と実証的事例研究を交錯して、とりわけ「らしさ」の概念を中核とする表象の問題(表現することと現れることの関係性)とその関連分野に関して意見交換や討論を終始行った。それと平行して、(1)村瀬は、存在と現象、自然と文化、一般性と個別性という哲学的対立概念を表象次元で交錯させる「らしさ」の位置づけについて理論的考察をした。(2)川上は、現代の情報社会における事件と事件らしさとニュースとニュースらしさに関連する社会心理学的データを練り上げる実証的研究をした。(3)一之瀬は、17世紀のフランスの演劇における誇張されつつ真実らしい登場人物造型の形成根拠について文学・演劇的考察をした。(4)北山は、自分と自分らしさの拮抗性が典型的に現れる自画像の系譜(画家のステータスの変容とそのアイデンティティーの練り直し)について実証的理論的研究をした。(5)木村は、映画芸術における「自然さ」の文法「ほんとうらしさ」を映画的表象性と関係づけて、とくにヒッチコック『裏窓』(1954)の冒頭場面を分析考察して古典的ハリウッド映画における「自然さ」の重要性を企画シンポジウムで明らかにした。そして、本研究が立ち上げた、異文化間における「らしさ」の研究では、大阪大学の北村卓教授を招聘して、宝塚歌劇におけるフランスらしさ/日本らしさの研究を行い、それが文化的重層性の産物であることを確認した。こうして本研究の目的--「らしさ」という概念を軸に、表象文化の成立と変遷を「自然」の成立との交替として捉え直し、近現代の表象文化の諸展開について具体的・包括的な見取り図をつくること--は、おおむね達成された。そして、研究成果全体を公表すべく報告書『多メディアにおける「らしさ」の変容--表象文化にとって「自然さ」とは何か』(194頁、2011年3月)に掲載し刊行した。
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Research Products
(7 results)