2010 Fiscal Year Annual Research Report
ファッションイラストレーションにおける線画表現技法の研究
Project/Area Number |
20520136
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Research Institution | Bunka Women's University |
Principal Investigator |
長沢 幸子 文化女子大学, 服装学部, 准教授 (20261092)
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Keywords | Fashion / Illustration / Design / Drawing / Expression |
Research Abstract |
本研究ではファッションイラストレーションの線画表現技法についての検討を進めた.平成22年度は、日本のファッションイラストレーションの線画表現技法の変遷を俯瞰・検討してまとめ、その全体像を明らかにした。 ファッションイラストレーションは「着装した人物の服装美」を描くことが中心となる。これは(1)情報伝達用ファッションイラストレーション(2)被服設計用ファッションイラストレーション(3)鑑賞用ファッションイラストレーションの3つに分類された,その目的は各々(1)商業デザイン、(2)工業デザイン、(3)教養・趣味・自己表現に対応された。 まず、上記(1)「情報伝達用ファッションイラストレーション」の技法と表現の変遷について明らかにした。これは日本では飛鳥時代の高松塚古墳壁画などにその先行イメージが見出された。その後平安時代の源氏物語絵巻などを経て日本独自の着衣の人物像の表現様式が育まれた。そしてこの表現様式は、菱川師宣が創始したとされる浮世絵版画により、ファッションイラストレーションとして確立したと考えられた。「ファッションを全面に押し出した大量印刷」により、浮世絵版画は日本のファッションイラストレーションの原点と位置づけられた。浮世絵版画の技法としてのファッションイラストレーションへの貢献は、肉筆画ではやや曖昧さの残る日本の着衣の人物像を、版画の「彫り」の技術により際立たせ、曖昧さを排除して確定し、後世に海外からも認められる水準の線画芸術表現を確立したことであろことが明らかになった,また江戸時代末期から大正期にかけて西洋画およびアールヌーボー、アールデコの技法と表現が流入した。これ以後、日本のファッションイラストレーションの表現の問題は、(1)人体と被服の表現において、写実性と様式化の間でいかにバランスをとろかということ、(2)その問題をいかに線画(輪郭線)および塗りと、輪郭線のない陰影法などによる表現の間でバランスをとろかということ、の2点に集約されていったことが明らかになった.さらに、上記(2)「被服設計用ファッションイラストレーション、の技法と表現の変遷をも明らかにした。
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