2009 Fiscal Year Annual Research Report
包括的な文化理解に基づく彫刻文化財修復論の措定研究
Project/Area Number |
20520138
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
秋田 孝弘 Rissho University, 仏教学部, 教授 (50287918)
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Keywords | 芸術諸学 / 彫刻修復論 / 文化財修復哲学 / 仏像修復 / 彫刻論 / 文化理解 |
Research Abstract |
平成21年度は、20年度までの成果を元に、1.現時点での文化財修復(彫刻)に関する課題を抽出し、それが現象化していく経緯と要因についての検討作業、2.彫刻芸術のオーセンティシティについての究明、3.文化財に関わるすべての活動が「文化理解」につながる可能性への取り組み、以上3点について研究を行った。 1.については、定例研究会を複数開催した。とくに外部の専門家を招いた研究会では、西洋と日本の文化財関連活動の推移を確認し、日本の彫刻文化財修復理念の受容の在り方を考察した。また日本における文化財概念を再検討の上、彫刻文化財の修復理念を問い直す観点について検討を行った。文化財修復学会に参加し最新の文化財修復の事情を把握の上、作業を進め、次年度の学会発表内容について決定した。 2.については、公開講演会「文化財修復のための『彫刻論』について」を開催し、芸術作品のうち特に彫刻作品の美の本質と、その制作と鑑賞に関わる感覚に関する講演内容を通し、修復専門家同士のディスカッションを行い、彫刻文化財の修復が抱える課題を浮彫にした。1~2.について冊子化への準備を行った。 3.については、研究代表者が所属する立正大学仏教学部の協力を得て、一般向けに「文化財保存学講座」を開講した。この講座の目的は文化財修復の観点を通して一般の人に文化を再認識してもらうことにあり、彫刻をはじめ他分野の文化財修復の専門家を招いて、5回の講座を開催した。各講座を通して、日本における文化財修復の各分野の要点や現状の問題点を紹介し、そこに共通する「文化理解」への取り組みの重要性を理解してもらうことに努めた。その際の質疑応答やアンケートによって、この「取り組み」が各人の感性の中に潜在する文化性を再確認する機会になったことが認められ、文化財修復の意義と可能性を社会的に広める場になったことが確認できた。
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Research Products
(2 results)