2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520149
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Research Institution | Hokkaido Musashi Women's Junior College |
Principal Investigator |
中澤 千磨夫 Hokkaido Musashi Women's Junior College, その他部局等, 教授 (10198062)
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Keywords | 小津安二郎 / 小津 / 映画 / 日本映画 / 映画史 / 映像論 / 日本文化 / 大衆芸術 |
Research Abstract |
本研究は、日本が世界に誇る映画監督小津安二郎の全作品に登場する地名・人名等の固有名詞を映画テキストと脚本から採集し、文献および臨地調査による学問的裏付けに基づき注釈を付そうとするものである。注釈はテキスト読解の基礎であり、本研究成果が読める事典として完成した暁には、小津安二郎研究の基礎資料として確固たる位置を占めることになるだろう。 本研究の直接的先行成果として、研究者自身による「痙攣するデジャ・ヴュービデオで読む小津安二郎-(11)小津安二郎作品地名・人名稿(戦後モノクロ映画編)」(『北海道武蔵女子短期大学紀要』39、2007年)がある。『長屋紳士録』(1947年)から『東京暮色』(1957年)に至る9作品から、計705項目を掲出し、注釈を加えた。本研究はこれを承け、まずカラー映画の注釈作業から取りかかり、その成果を「痙攣するデジャ・ヴュービデオで読む小津安二郎-(12)小津安二郎作品地名・人名稿(カラー映画編I)」(『北海道武蔵女子短期大学紀要』41、2009年)として発表した。扱った作品は『彼岸花』(1958年)、『お早よう』(1959年)、『秋刀魚の味』(1962年)の3本。掲出項目はそれぞれ、120項目、108項目、123項目、計351項目である。これまでの研究史において見逃されてきた項目を多数収録した。 小津安二郎は映像の細部に至るまで徹底的に拘った作家である。よって、ほんの一瞬写し撮られたモノからも、当時の日本人の生活や意識を反映しているという以上の意味を読み取ることが要求される場合がある。例えば、『お早よう』の子ども部屋に配された森永ドライミルクの空き缶は、当時の大事件への連想を容易ならしめる。同じ子どもの反抗を扱いながら小津の目は戦前・戦後で変化している。社会状況との関係を批評する作家の目を読むことが可能になるのだ。
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Research Products
(3 results)