2009 Fiscal Year Annual Research Report
藤原道長家の後宮サロンの実態とその文学活動に関する研究
Project/Area Number |
20520157
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
池田 尚隆 University of Yamanashi, 教育人間科学部, 教授 (70151298)
|
Keywords | 藤原道長 / 後宮サロン / 仏教思想 / 藤原彰子 |
Research Abstract |
20年度の研究(1私家集を中心とした和歌資料の収集、2『源氏物語』とその周辺の再検討、3儀式関係資料の収集、4『栄花物語』中の仏教関係記事の分析)を続行するとともに、5女性の出家に関する諸問題を検討し、後宮サロンの時期的変遷を追うこと、6道長の建立した法成寺と女性との関わり、7道長死後のサロンのあり方について、資料収集と分析・研究を行った。 5については、道長の妻倫子と長女彰子の出家に関する資料を収集し、サロンに集う女性達の出家に対する思い、女主人の出家の前後でのサロンのあり方の違いをみることで、サロンという集団における仏教思想のあり方を考察した。また、サロンがその主人の人生史にともない求めるものが変わっていくこと、すなわちサロンを、構成員と同じように成長し、老いていくものとして捉えていく方法を探った。 6は、法成寺が当時のあらゆる仏教信仰を、現世においてかたちにした寺院であることを確認し、さらに、その西北と東北の角に、倫子と彰子が堂を建立した意義を考察した。それは、後宮サロンの価値観や、摂関期における女性達の位置を示すものであることを明らかにした。 7に関しては、歴史物語、歌合関係資料に加え、『小右記』『左経記』『春記』等の漢文日記を調査した。道長死後のサロンは、道長時代の後宮文化の継続に加え、彰子を中心により自由で大掛かりな行事の催行により、その存在を主張していくことが明らかになった。 上記の調査、研究により、後宮サロンを文学のみならず、政治、経済、宗教といった観点から総合的に捉えることができ、最終年度の課題である文学作品の新たな読み、評価へと研究を進めるための基盤が完成した。
|