2010 Fiscal Year Annual Research Report
藤原道長家の後宮サロンの実態とその文学活動に関する研究
Project/Area Number |
20520157
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
池田 尚隆 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (70151298)
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Keywords | 藤原道長 / 後宮サロン / 藤原彰子 / 栄花物語 / 源氏物語 |
Research Abstract |
前年度までの研究(1 私家集を中心とした和歌資料の収集、2 『源氏物語』とその周辺の再検討、3 儀式関係資料の収集、4 『栄花物語』中の仏教関係記事の分析、5 女性の出家に関する諸問題を検討し、後宮サロンの時期的変遷を追うこと、6 道長の建立した法成寺と女性との関わりの解明、7 道長死後のサロンのあり方についての資料収集と分析・研究)を続行するとともに、藤原道長家の後宮サロンの実態を踏まえたうえでの文学作品の新たな読み、評価の可能性を探った。 具体的には、道長家に仕えた女房達による作品、日記では『和泉式部日記』『紫式部日記』、家集では『紫式部集』『赤染衛門集』『伊勢大輔集』、さらに『御堂関白集』(藤原道長の家集というよりもむしろ道長家の贈答歌集という性格が強い)などを対象に、新たな読みを試みた。 歴史物語に関しては、『栄花物語』続編を中心に研究を進めた。道長死後を扱う続編は、作者も成立年代も巻三十までの正編と異なる。また、ある程度まとまった資料の寄せ集めを主体として出来ているとされる。今回、彰子サロンの影響を見出すという観点から分析し、そこでの継続的な修史事業が『栄花物語』の資料の中核になっていることを確認できた。『栄花物語』続編は、道長家の女性サロンという恵まれた環境が生み出した最良の華の一つとして位置づけられる。 さらに、以上のような実生活に根ざした作品群の読解をもとに、虚構の物語である『源氏物語』の新たな読みもさぐった。さまざまな場合に小さな女房集団の記録が書かれて伝えられていたと考えられ、それらの中には優れた物語作品とも言えるレベルに達していたものもあった。『源氏物語』のいわゆる「歴史性」もそのような資料を念頭において考えるべきだという新しい視点が得られた。
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