2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の<民族精神>による<国民文化>の系譜――ドイツとの比較を視座として
Project/Area Number |
20520158
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
林 正子 Gifu University, 地域科学部, 教授 (30198858)
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Keywords | 民族精神 / 国民文化 / 近代日本 / 国家アイデンティティ / 民族主義 / 民俗学 / 柳田國男 / ハインリヒ・ハイネ |
Research Abstract |
本研究の目的は、1870年前後から第二次世界大戦までの、いわゆる近代という時代状況について、日本とドイツが、その思想的潮流や歴史的背景において多くの共通点や対照性を示していることを踏まえ、ドイツとの比較を補助線として、近代日本における国家アイデンティティの内容を明らかにすることである。 本年度は、論文「近代日本における<民族精神>による<国民文化>の系譜-ドイツとの比較を視座として」で、ドイツにおける民族至上主義台頭の背景を踏まえ、日露戦争前後から第二次世界大戦時までの日本における評論・論説に展開された<民族精神>論の内容を確認した。そして、20世紀前半の<国民的自覚>高揚期から<近代の超克>にいたるドイツと日本の<民族主義>と<民俗学的研究>の対応関係について論じた。 また、論文「柳田國男のハイネ受容による<民族>の発見-<民族精神>の高揚と<民俗学>隆盛の連環を考究するために」において、ドイツの<民族主義>に抗したハイネ受容をとおしての近代日本における<民族>の登場、とくに柳田國男の談話「幽冥談」(「新古文林」明治38年9月)にうかがえるハイネ受容をとおしての<民族>認識について考察した。 次年度は、明治初年代から大正期の文明評論における<文明>概念の変遷の軌跡をたどる。西洋文明が物質文明として相対化される段階を経て、精神性重視の<文化>概念が<文明>の用語から自律し、<文化主義>が提唱されてゆく様相を明らかにする。その際、ドイツにおける<教養>概念を、近代日本がどのように受容したかについて検討し、<文化>が創造されてゆく場としての<大学>の理念について、また<文化>を創造する主体であり媒介である<学問>の定義について、森鴎外の論説等を中心に考察する。
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Research Products
(6 results)