2009 Fiscal Year Annual Research Report
定家本源氏物語・伊勢物語の本文成立史に関する横断的研究
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20520162
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 洋介 Osaka University, 文学研究科, 准教授 (00214411)
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Keywords | 源氏物語 / 伊勢物語 / 定家本 / 本文 |
Research Abstract |
本研究は池田亀鑑『源氏物語大成』青表紙本校異および池田亀鑑『伊勢物語に就きての研究校本篇』・大津有一『伊勢物語に就きての研究補遺篇』・山田清市『伊勢物語校本と研究』という伊勢物語の三校本の補訂および増補作業を基盤とする。その作業の過程において、本文変化の様相や音便・表記といった点について、定家本伊勢物語における本文変化を時系列上で捉え、もってそれを定家本源氏物語の側への検証へと資することを目的とする。この研究目的を遂行するため、上記の校本所収伝本の調査および収集を行ない、補副および増補作業を実施した。 その間の研究成果として、定家本系統の伝本として、現在最も尊重されている大島本について、その用字や改行といった細微な異同に注目するところから、大島本が定家自筆本系統の本から直接書写されたものではなく、肖柏本・書陵部三条西家本・大正大学本といった伝本から窺うことのできる室町期に流布していた本文に、定家自筆本系統の本文を校合することで成立したのではないかとの見解を論文化して発表した。これは伊勢物語の書写のありようから着想を得たものであり、本研究が目的とする源氏物語と伊勢物語との横断的研究による成果である。 また南北朝期に成立した『仙源抄』に引用されている定家本源氏物語が、今日からみても非常に素姓のよい本文を有していたと推測されることを述べ、断片的に引用されるに過ぎないものの、『仙源抄』所引の定家本源氏物語には、非常に資料的価値が高いことを論文化して発表した。
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Research Products
(3 results)