2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520166
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新城 郁夫 University of the Ryukyus, 法文学部, 教授 (10284944)
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Keywords | 沖縄文学 / ゲイ・スタディ / 反国家論 / ポストコロニアリズム / 戦後思想 / セクシュアリティ / ミシェル・フーコー / ジェンダー |
Research Abstract |
平成21年度当該研究における研究成果の筆頭に、論文「「反復帰反国家論の回帰」(成田龍一他編『戦後日本スタディーズ(2)』紀伊国屋書店)を挙げることができる。この論文において、戦後沖縄における反復帰反国家論の独自性をもった展開が、初めて戦後日本思想史の流れのなかで本格的に考察されることとなった。特に、新川明と岡本恵徳という戦後沖縄を代表する批評家の反復帰論反国家論が、「集団自決」と「復帰運動」への内在批判的スタンスから生成されていく過程を明らかにした点にその重要な意義を持つ論文と言える。なお、この論文の意義については、発表間もなく、『週刊金曜日』等のオピニオン紙でも評価きれている。また、この論とならんで、「音の輪郭-高橋悠治の音楽とイトー・ターリの身体パフォーマンスを繋ぐ場所「(李静和編『残傷の音-「アジア・政治・アートの未来へ」岩波書店』も、特に、中屋幸吉という戦後沖縄文学思想史における特異な表現者の言説を、特に、戦争の記憶を介した東アジアの歴史横断的な思想のなかで位置づけた初の論考と言える。この論考において、特に、身体性およびジェンダー/セクシュアリティの政治性を、痛みの共振作用という点から論じている点がこの論文の重要な点であり、こうした成果については、『週間読書人』『みすず』といった専門書評紙において評価を受けた。なお、このほか、戦後沖縄文学に関する直接的な論究ではないものの、論文『〈生=セクシュアリティの技法〉の倫理-晩期フーコーの「パレーシア」という言表主体化概念に、1980年代ゲイ・セクシュアリティに関わるエイズ危機という現在性が深い影響を与えていることを明らかにして、現在のゲイ・スタディにおけるフーコー再評価の契機となる論考となっており、既に幾つかの論文で引用論究されている。こうして、戦後沖縄文学および思想におけるジェンダー及びセクシュアリティの政治的独自性を開示しえた点に、本年度の研究実績の独自性と重要性がある。
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[Journal Article]2009
Author(s)
新城郁夫
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Journal Title
李静和編『残傷の音-「アジア・政治・アート」の未来へ』岩波書店(音の輪郭-高橋悠治の音楽とィトー・ターリの身体パフォーマンスを繋ぐ場所)
Pages: 21-41
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