2008 Fiscal Year Annual Research Report
『とりかへばや』伝本の流布状況を視点とした江戸時代における物語享受の研究
Project/Area Number |
20520170
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
西本 寮子 Prefectural University of Hiroshima, 人間文化学部・国際文化学科, 教授 (70198521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤迫 照子 広島大学, 附属図書館, 助教 (70452612)
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Keywords | とりかへばや / 中世王朝物語 / 物語享受 / 山岡浚明 |
Research Abstract |
20年度は、未紹介伝本についての情報収集と未調査伝本の調査及び紙焼写真等での収集に務めた。具体的には次の通りである。 新たに現存を確認した寛延四(1751)年書写本(零本)については、書写者である滋野井公麗所持と伝えられる『浜松中納言物語』(京都大学蔵)との筆跡比較を行い、その一部が同一筆跡である可能性を確認し、山岡浚明考勘直前の時期における物語の流布状況を考察する上で貴重な資料であることを確信するに至った。また、岩井良雄旧蔵の伝本については、明治期の書写ながら浚明本の特色を有する善本であると推測されること、国学者の間で継承されたことに意義が認められることを確認した。このほか、案地調査を実施または紙焼写真を入手したのは、実践女子大学蔵清水浜臣旧蔵本など二伝本、西尾市立岩瀬文庫蔵本、尊経閣蔵本(マイクロフィルムによる調査)、長谷章久旧蔵本、初雁文庫藏本等である。実践女子大蔵本はいずれも国学者に伝えられた伝本であるが、そのうちの一本には古写本との異同が記されていること、尊経閣蔵本及び初雁文庫本は公家に伝えられた性格を色濃く見せる善本であること、長谷本は数少ない改作本系統であること、浚明本系の岩瀬文庫本は施注に特色が認められることを確認した。いずれも具体的な考察については今後の課題であるが、これまでほとんど指摘されてこなかったことである。なお、このほかに、所在が知られなかった本多忠憲作成『とりかへばや系図』の転写本の現存を確認し、周辺資料として、所蔵者名が記される『浜松中納言物語』『しのびね』等の伝本や、『古物語目録』『風葉和歌集』についての情報収集にも着手した。
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Research Products
(2 results)