2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国の口語散文に与えた日本文学の影響-周作人の日本文学受容をめぐって-
Project/Area Number |
20520172
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
顧 偉良 Hirosaki Gakuin University, 文学部, 教授 (50234654)
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Keywords | 周海嬰氏の訪問 / 周作人親族の訪問 / 周作人と「新しき村」 / 周作人と松枝茂夫 |
Research Abstract |
昨年度は、資料収集などにより予定の研究計画を変更し、以下の通り訪問調査、シンポジウム及び論考執筆(「浅析周作人的思想与文学方法」〔「周作人の思想と文学の方法をめぐって」〕、中国国内の研究誌『紹興魯迅研究2009』に掲載予定)を行った。2008年10月18日、科研費補助金によるシンポジウム「魯迅、周作人と一九二〇年代の日本」(平成20年10月)を弘前学院大学で開催した。顧偉良(研究代表者)の報告「周作人の散文世界におけるユートピアの精神をめぐって」(コメンテーター:李梁〔弘前大学准教授〕、『弘前学院大学文学部紀要第46号・2009年』に掲載予定)、小川利康(早稲田大学教授)の報告「周作人と松枝茂夫雑誌『近世庶民文化』掲載の逸文をめぐって」(コメンテーター:長堀祐造〔慶応義塾大学教授〕)が行われた。顧の報告は、第I部、第II部に分かれる。第I部では、08年9月に北京等地で行った訪問調査(周海嬰〔魯迅の息子〕、周作人の家族〔長男周豊一の妻、張〓芳女史〕とのインタビュー、また北京魯迅博物館の陳漱渝〔元副館長〕、人民文学出版社の元外国文学翻訳編集監修、日本文学翻訳家の文潔若への訪問、および紹興魯迅記念館、上海魯迅記念館での研究者同士の交流)をふまえ、八十年代以降の中国国内における周作人研究動向などについて紹介した。報告後、北京での周作人親族や周海嬰等の訪問スライドを見せた。第II部では、武者小路実篤「新しき村」の思想受容をめぐる周作人の一九二〇年代以降の精神遍歴について考察した。小川利康の報告では、周作人・松枝の往復書簡を整理する過程で発見した幾つかの興味深い事実を踏まえ、『近世庶民文化』に掲載された松枝茂夫と周作人の戯文を取りあげ、古川柳の中でバレ句(性にまつわる題材を取り上げたもの)を専ら扱う雑誌になぜ二人は興味を持ち、その背景には周作人のどのような思想が見出せるかについて検証した。
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