2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国の口語散文に与えた日本文学の影響-周作人の日本文学受容をめぐって-
Project/Area Number |
20520172
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
顧 偉良 Hirosaki Gakuin University, 文学部, 教授 (50234654)
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Keywords | 周作人と日本 / 周作人家族訪問 / 周作人と武者小路実篤との交流 / 大江健三郎と戦後文学 |
Research Abstract |
中国国内における周作人研究の動向を注視して、昨年度から『紹興魯迅研究』(紹興魯迅記念館編)に一部の研究成果を連載し始めた。昨年は、周氏兄弟(魯迅、周作人)および章太炎における異なった方法で外来思想の摂取の有り方に着目し、周作人の文芸思想の特徴および小品文における論理的方法を検証した。周作人は小品文の伝統を継承するのみでなく、理性の面でも小品文における真理の探究に重きを置いている。その方法は、ワイマール時代のハイデッガーやブロッホの芸術に関する論理的方法に一脈通ずるところがある。もう一つの論文は、ジャンルとしての小品文に着目して、周作人の新詩実験をめぐる武者小路実篤との思想交流および詩集『過去的生命』とロマン主義について検証したものである。中国の新文化運動期において、同時代の文学現象としてもっとも目立ったのが伝統の否定および「個性」の解放であった。それと共に詩において「絶対的自我」の主張や表現が顕著に現れてきた。これに対し、理知を重んじる周作人は、新文化運動期に他の文学者とは異なる独自の道を歩んでいった。周作人が重要視したのは、ジャンルとしての小品文であり、つまり「知」としての文化テクストの生産であった。 なお、昨年は周作人家族訪問および文潔若女史訪問と同時に、2009年8月30日に北京の中国現代文学館で、「大江健三郎と日本の戦後文学について」と題する講演を行った。その一部は、月刊『博覧群書』(2010年1月、光明日報社・北京)に転載された。主として第一次戦後派、第二次戦後派の代表的作家(野間宏、大岡昇平、三島由紀夫、川端康成)をとりあげ、大江健三郎の文学評論と戦後作家との関係性について検証した。
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