2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本および周辺地域に波及した祝穆編書の版本研究―建陽坊刻類書の伝播に関する考察―
Project/Area Number |
20520175
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
住吉 朋彦 慶應義塾大学, 斯道文庫, 准教授 (80327668)
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Keywords | 祝穆 / 版本学 / 事文類聚 / 方輿勝覧 / 禅林類書 / 建陽本 / 金陵本 / 事類全書 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画の最終年度に当たり、日本における祝穆編書の受容の様子を、版本学的観点から考察し、その消長を跡付けた。まず『方輿勝覧』について、日本では専ら「新編」の二字を冠した宋咸淳3年序刊本系統〔元初〕刊本の流布したことが判明した。その時期は南北朝から室町時代前期、大略14至15世紀の間に当たる。室町後期には衰勢に転ずるが、その理由として、元明間に中国北方の地名と故事に接し得て、南方のみの地志である南宋時代の編著が有効ではなくなったこと、日元・日明貿易で多数もたらされた『翰墨全書』に参考書の地位を譲ったことが、日本禅林編述類書の検討により跡付けられた。 これに対し、総合的な類書である『事文類聚』は、中世から近世にかけて長く行われたが、この間、流布の伝本には変転が認められた。まず中世流布の版本は、元泰定3年盧陵武渓書院刊本である。この系統の版本は、前後続別新外の六集本として中国建陽に於いて転々と翻刻されたが、中世の間は大略元版によって受容された。しかし近世初になると、六集221巻本の朝鮮刊甲辰字本が少しく流入、その翻印である日本の古活字刊本を成立させ、情況が一転したが、江戸前期に、明版六集の建陽本と、万暦年間に新校を加え遺集を加え七集とした、金陵本が将来されて再転し、金陵本を基に建陽本を校合した、寛文6年刊行の和刻本『事文類聚』を成立させた。以後、延宝5年の建陽本による節略本『事類全書』を伴いながらも、寛文刊本が本書流布の主流となって、日本の学問文化を潤したことが判明した。 本年度は、以上の見解を基に、第30回和漢比較文学会記念大会において関連の研究発表を実施、同時開催の筑波大学附属図書館特別展「日本人のよんだ漢籍」において、筑波大学附属図書館蔵・寛文6年刊本『事文類聚』の解説にも知見を盛り込み、関係の学術論文2篇を公刊して、研究のまとめとした。
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Research Products
(3 results)