2010 Fiscal Year Annual Research Report
近世における検閲が文学作品のテキストや挿絵に与えた影響の研究
Project/Area Number |
20520177
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 悟 実践女子大学, 文学部, 教授 (50178729)
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Keywords | 検閲 / 絵本太閤記 / 合巻 / 絵本 / 名主改 / 天保改革 / 正本写 / 開板指針 |
Research Abstract |
文化元年の『絵本太閤記』絶板に伴う、色摺絵本刊行の禁止が江戸における独自の絵本文化を産み出し、草双紙の合巻化や読本の装飾性の意味するものについての仮説を立て、検証を行ってきた。今年度は合巻に与えた影響を調査し、役者絵本とよく似た性格を持つ柳亭種彦作『正本製』全十二編(文化十二年-天保二年刊)について解析を行った。その成果の一部は絵入本ワークショップIV(平成22年12月4日~5日、於大和文華館)において「役者絵本としての『正本製』」として口頭発表を行った。 さらに色摺絵本刊行の禁止の効力が及んだ時期の検証に、当初禁令が行われたため墨摺本として刊行された絵本類が後摺本では彩色本として刊行されるものがあり、その諸本調査を国立国会図書館・ライデン民族学博物館・パリ国立図書館、ギメ美術館等において行い、予期された現象を確認することができた。これは今後のさらなる調査を必要とする。 また合巻の中の「正本写」と呼ばれる一塁について、天保改革以降の演劇に関する規制の影響について総合的に纏めることができた。これは「正本写」を悉皆調査し、上演された演劇との関係を明らかにし、演劇に対して行われた規制が「正本写」にどのように反映されたかということを明らかにし、国立劇場調査養成部より『正本写合巻年表』として刊行した。本書の特色は「正本写」を刊行順ではなく、上演順に列記したことに特色があり、そのため演劇に対する規制の影響を月単位で明らかにすることができた点に独創性がある。 『開板指針』については研究会を開き、ほぼ読了することができた。その結果、江戸と大坂における規制のあり方が異なることが判明した。これについては研究協力者により公表される予定である。
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Research Products
(2 results)