2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世における検閲が文学作品のテキストや挿絵に与えた影響の研究
Project/Area Number |
20520177
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 悟 実践女子大学, 文学部, 教授 (50178729)
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Keywords | 開版指針 / 学問所 / 書物の流通 / 絵本太閤記 / 彩色摺禁止令 / 文化露寇 / 式亭三馬 / 阿古義物語 |
Research Abstract |
22年度まで共立女子大学、23年度は日仏会館会議室で行われてきた「開版指針』の研究会は無事終了した。これについてはレポーターの白戸満喜子氏によって報告される筈である。この研究を通じて、天保改革時の出版統制は江戸の奉行所と大坂の奉行所では対応に地域差があることが判明した。両者の間の問題を解決する役割を果たしていたのが学問所であり、またその権限は天領のみならず、諸藩の刊行物にまで及んでいたことが明らかになった。そのような背景には流通の問題が関わるという予想を立てることができた。今後の研究課題である。 また文化元年の『絵本太閤記』の絶板事件に伴い、草双紙が絵本化し、合巻として発展したという仮説(「文化前期の地本問屋と文化元年の彩色摺禁令」『国語と国文学』平成22年3月)を実証するために絵本の研究をおこなった。その成果の一部を「『人物略画式』の画題」として「国際シンポジウム:鍬形〓斎の画本芸術-江戸からパリへ」(於日仏会館、平成24年3月2日)で発表した。そしてマティ・フォラー氏(ライデン民族学博物館)と絵本について議論をおこなった。また間接資料収集のため、日比谷孟俊氏(慶応義塾大学)に立命館大学における調査を依頼した。 さらに文化露冠の問題については、紛争当事者であるロシア以外の外国に関わる規制が式亭三馬『阿古義物語』見返しの銅版画風挿絵に象徴されるように。読本・草双紙等で行われていないことが確認された。これは幕府の対外対応が成熟したものであり、元寵のようなロシアとの軍事衝突を連想させるものについてのみ規制が行われたことが明らかになった。このことにより、従来の文化露寇の文学に与えた影響について考え直す必要が生じた。これについては法政大学におけるシンポジウム「日本を意識する時」(平成24年3月9日)で発表した。
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Research Products
(2 results)