2009 Fiscal Year Annual Research Report
使者文学の基礎的研究-戦国・島原の乱を中心として-
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20520198
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Research Institution | Ibaraki Women's Junior College |
Principal Investigator |
武田 昌憲 Ibaraki Women's Junior College, 国文科, 教授 (00221375)
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Keywords | 島原の乱 / 戦国軍記 / キリシタンー揆 / 板倉藩 / 九州大学図書館 / 内閣文 / 近世初期 / 松平信綱 |
Research Abstract |
九州大学図書館および同天文系合同図書室蔵本を調査できた。合同図書室では『大坂御陣並天草実録寫』の記述に「使者上下壱万五千人」という記述に注目。従来使者は八百人という推測を大きく上回る数字は、却ってこれまでの調査の数字と近いものであった。その他『肥後国天草四郎記』『天草征伐記』『嶋原陣覚書』『島原軍記全』等数点の閲覧と調査が行えた。しかし同大九州文化史研究所の蔵本は閲覧できなかったので、今後の調査を待ちたい。福岡県立図書館では『黒田家譜』を閲覧したが、当該記事が最も多く、他藩の使者の記述を調査中である。 紀伊徳川家、仙台伊達家でも島原に使者を派遣している。特に紀伊徳川家では上使松平信綱の現地派遣に途中から同行し、戦闘に参加している。これは信綱一行の記録『嶋原天草日記』(信綱の子、輝綱作)の紀伊家参加の記録と一致するものの、紀伊家は実際には多くの家臣を同行させて島原で戦闘に参加させ、実際に討死するものも出ている。仙台伊達家は戦闘参加状況は不明であるが使者を何回か派遣。南部藩は幕府から御咎めを受けて謹慎中で、使者の派遣は記録に見当たらないが、キリシタンの禁制には積極的である。目下、各藩史を探っているが該当年の記事が未刊のところが多く、またあっても記事が軽いので難航している。 内閣文庫蔵の板倉関係資料を調査閲覧。複写した。今後の研究と翻刻に努めたい。 福島県立図書館蔵『嶋原一揆有増之記』の板倉重昌と『嶋原天草日記』の松平信綱の行程をそれぞれ見ると、戦場に赴く過程を詳述し、一種の「戦記的紀行文学」とでもいうべき趣きを成している。新たな文学的価値として指摘して行きたい。
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Research Products
(1 results)