2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世初頭までの禁裏・公家文庫における説話集・霊験譚集・縁起享受の実態調査・研究
Project/Area Number |
20520203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 澪子 The University of Tokyo, 史料編纂所, 研究員 (50442497)
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Keywords | 日本中世文学 / 説話 / 霊験譚 / 縁起 / 文庫 |
Research Abstract |
本年度は、岩瀬文庫所蔵の柳原家旧蔵本等から説話・縁起関係と見做すことの出来る作品の抽出を行い、また禁裡文庫に関わる目録からも関係典籍の抽出を行った。現時点で総数はのべ約200点である。これらを一覧表とし、現存典籍と目録、あるいは文庫間の関係について考察した。 禁裏文庫(伏見宮家・高松宮家等関係を含む)に関わる目録25点について調査を行ったが、説話・縁起関係に限っても、現存する東山御文庫本や高松宮家伝来禁裏本をすべてカバーするようなタイプの目録には出会えていない。今後文庫全体を網羅する目録が新たに見いだされる可能性に期待したいが、これら現存する各種目録が、それぞれどのような必要や目的によって作成されるのか、その解明が大きな課題として存在することが再確認された。 先の一覧の内から、特に複数の文庫等に現存する作品について、それぞれの本文の比較を行った。本年度は、やや検討が遅れているかと思われる『駿牛絵詞』(伏見宮家本・岩瀬文庫本・京都大学付属図書館平松文庫本・続群書類従本)、これまで孤本とされてきた『言談抄』(岩瀬文庫本・東山御文庫本(作品名は『秘記』))、また『長谷寺縁起』(伏見宮家・高松宮家他)他の本文校訂作業を行った。 更に個別の作品研究として禁裏・公家関係の文庫・目録に複数名の見える『古事談』に関して、抄出本乍ら最古写本である『古事談抄』の注釈を行った(共編著として刊行)。また編者未詳の『十訓抄』については、これが六波羅探題被官を勤め得るような人物の手になる可能性を発表し、公家を中心に集積された知識の、当該期における伝播の一端を示した。
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