2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520204
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
小川 剛生 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (30295117)
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Keywords | 迎陽記 / 改元 / 年号 / 足利義満 / 公家日記 / 三条西実隆 |
Research Abstract |
(1)22年度はこの研究の最終年度であり、中世の改元年号に関する文献として最も重要なものの一つ、東坊城秀長の日記迎陽記(こうようき)、およびその周辺の史料の研究に力を注いだ。その結果、三月に『迎陽記 第一』を史料纂集の一冊として刊行することができた。康暦元年(1379)・二年・応永五(1398)・六・八年の、五年分の日次記を収載するもので、史料纂集の体例に倣って記事の要旨を標目として掲げ、また人名・校訂・説明などを本文に傍注する。南北朝期十回の改元に携わっていた当事者の日記が刊行されたことで、この分野の研究の基礎を築くことが出来た。 (2)迎陽記から改元関係の記事を抜書集成した部類記と推定される、迎陽記抽要についての研究を進めた。本書の祖本は、秀長自筆本を書写した三条西実隆筆本であることを突き止めて、その実隆筆本の断簡一葉と、直接の転写本と推定される善本を見出すことができた。従来利用されてきた紅葉山文庫本(江戸前期写)と比較すると、惜しむらくは九割ほどの抄出本であるものの、本文の優良さは言うまでもなく、今後の研究の基礎となるべき本である。 (3)歴代の武家政権のうちでも、北朝の年号を頻繁に改めさせ、改元に最も干渉したのは室町幕府三代将軍足利義満である。一方、改元をせずに「応永」という一つの年号を使用し続け全く関心を示さなかったのが、四代将軍義持であり、対照は明らかである。この父子の文化政策を、論文「飛鳥井家の歌学と蔵書」にまとめて投稿した(23年11月刊行予定)。
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Research Products
(3 results)