2008 Fiscal Year Annual Research Report
ユダヤ人の記憶とホロコースト研究における記憶の政治学
Project/Area Number |
20520205
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
羽村 貴史 Otaru University of Commerce, 言語センター, 准教授 (00312439)
|
Keywords | 記憶 / ユダヤ / ホロコースト / I・B・シンガー / ハロルド・ブルーム / 誤読理論 |
Research Abstract |
平成20年度は、科学研究費を利用して、論文3本の発表に加え、海外出張1回、国内研究会出席1回および大量の図書購入を行った。論文は、イディッシュ文学論1本と誤読理論に関するもの2本の、計3本である。イディッシュ文学論(2008年6月発表。ただし、機関誌の正式発行日は2008年3月31日)では、I・B・シンガーの中篇小説を取り上げ、崩壊してゆく記憶の文化と加速する世界の世俗化・歴史化を読み解き、現代におけるユダヤの宗教と社会について考察した。ホロコースト以後(ないし冷戦期あるいはイスラエル建国以後)におけるアメリカ合衆国とイスラエル国家のイデオロギーや政治的背景に関する吟味が足りなかったので、その点に課題の残る研究となった。今後も引きつづき研究を重ねる予定である。ほかの2本の論文では、ハロルド・ブルームの文学批評理論について考察した。この研究の最終的な目的は、彼の誤読理論を現代におけるひとつのユダヤ思想として位置づける点にある。しかし、今年度の発表論文ではそこまでいたらず、修正比率、グノーシス主義、反復理論、精神分析学における転移、オルペウス教、間テクスト性とインター・ポエムの関係性、再置換と呼ばれる修辞的転義およびアメリカ詩におけるエマソンの伝統を論じた。平成21年度は、その続篇として、ルーリヤ派カバラーの観点から彼の文学批評理論をユダヤ思想として論ずる予定である。2度の出張では、国内外の研究者や聖職者と交流を深め、さまざまに貴重な情報を交換することができた。また、購入した大量の書物により、これまでの研究について修正を迫られる点をいくつか発見できたのは、非常に有意義であった。
|
Research Products
(3 results)