2010 Fiscal Year Annual Research Report
エリザベス朝後期における、アングリカン・チャーチ体制と文化――大学才人を中心に
Project/Area Number |
20520207
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐野 隆弥 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (90196296)
|
Keywords | エリザベス朝 / アングリカン・チャーチ体制 / Thomas Nashe / ピューリタン / マーティン・マープレリット論争 / ハーヴェイ・ナッシュ論争 / 商業演劇興行 / Summer's Last Will and Testament |
Research Abstract |
平成22年度では、エリザベス朝における宗教・政治関係の研究書、及びアングリカン・チャーチ体制と演劇文化に関する文献・資料を収集し、あわせて、(1)エリザベス朝演劇興行に関する最新の研究書の書評を行うと共に、(2)Thomas Nasheの作家としてのキャリアの初期に創作されたSummer's Last Will and Testament (1592)に注目し、Nasheの政治的・宗教的位置の分析を行い、学会発表を2件行った。 (1)では、Tiffany Stern,Doccuments of Performance in Early Modern England (Cambridge : cambridge UP, 2009)を書評し、Shakespeare Studies Vol.48(日本シェイクスピア協会、2011年3月),pp.49-52に発表した(査読有り)。その中で、本書が、Nasheを含むエリザベス朝の劇作家達が、戯曲を上演する劇団や劇場とどのような実質的な関係にあるのかを、実証的なデータを中心に解明していること、さらにその成果が戯曲の意味の解明に貢献していることを強調した。 (2)においては、NasheのSummer's Last Will and Testamentを取り上げ、第49回シェイクスピア学会と第4回エリザベス朝研究会において発表した。Nashe唯一の現存戯曲が極めて限定された上演環境で演じられた点に注目し、該当作品の中に包含されている反知性主義言説が、従前の解釈のように無意味な脱線などではなく、本劇の上演環境を提供したNasheのパトロンWhitgiftとNasheとの主従関係に関連するものであり、そこには同時代の宗教政策が濃密に反映されていることを主張した。過激なピューリタンがアングリカン・チャーチ体制の批判を展開したマーティン・マープレリット論争の中で、体制側は反撃の一助としてNashe等文筆家を登用し、WhitgiftとNasheの関係はこの折りに成立したと考えられるが、Nasheは本戯曲の中で反知性主義言説=ピューリタンという図式を喚起することを通して、本劇の第一の観客であったWhitgiftへ愛顧の継続を訴えようとしたと考えられる、との結論を提示した。
|
Research Products
(2 results)