2009 Fiscal Year Annual Research Report
ウィリアム・ブレイクと柳宗悦に関する比較文学比較文化的研究
Project/Area Number |
20520211
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 光 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (80296011)
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Keywords | 英文学 / 比較文学 |
Research Abstract |
本研究の第一段階のまとめとして、前年度に行った基礎資料とその検討結果に基づき、Blakeが同時代の「東洋」の文献からどのような影響を受け、どのようにして独自の多神教的なキリスト教を構築したかを考察した。以下の三つの作業を行った。 第一に、William Jones(1746-94)やThomas Maurice(1754-1824)らがどのような観点からインドの文化、宗教等をキリスト教文化圏に紹介しようとしたか、という問題を設定した。彼らは、キリスト教中心主義の立場から、ヒンドゥー教を堕落した宗教とみなしたのか、それとも、世界に散在する多くの宗教のうちの一つとして異教を扱ったのか。もし、後者の立場をとったのであれば、ヨーロッパ啓蒙主義時代において、キリスト教文化圏では絶対的な真理の位置を、揺らぎながらもまだしっかりと保持していたキリスト教そのものとは、どのように折り合いをつけたのだろうか。この問題と取り組むためには、JonesやMauriceのテクストだけでは不十分であり、彼らの著作がロンドンでどのように受容されたのかを調べた。第二の作業として、18世紀ロンドンで出版されていた文芸批評雑誌(The Analytical Review, The Monthly Review, The Critical Review, The Gentleman's Magazineなど)に掲載された書評記事のうち、インド関連の文献に関わるものを選び出しその内容を調査した。これらの雑誌が個々に政治的な偏向を備えていたことは既に周知の事実であるので、保守派の立場、革新派の立場を勘案した上で、同時代のインド関連の文献に対する受容の諸相を考察し、書評記事から逆照射するかたちで、JonesやMauriceのテクストがもつ歴史的意義を確定した。これらの作業を済ませた後、第三の作業として、Blakeが独自のキリスト教を作り上げていく過程において、異教との接触がどのような意味を持ったのかを考察した。
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Research Products
(2 results)