2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520215
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
若林 麻希子 Aoyama Gakuin University, 文学部, 准教授 (50323738)
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Keywords | 英米文学 |
Research Abstract |
21年度は、求婚小説の一次資料の調査研究をこれまで通り継続して行う一方、それらの資料が書かれた歴史、社会、文化等のコンテクストの調査に重点を置いた。前年度に収集した資料の分析を行い、「友愛結婚」のヴィジョンを推し進めた感傷小説の流行のピークと認識されてきた1850年代が、実は、結婚の制度的、文化的な限界が、離婚の制度化とそれに伴う離婚率の急増といった社会現象となって可視化した時期でもあったことが分かった。このような歴史的文脈の発見は、Catharine Maria Sedgwick、Harriet Beecher Stowe、E. D. E. N Southworthといった前年度から継続して考察してきた女性作家が、幸福な結婚の理想を掲げる感傷小説的な伝統を継承しつつも、他方では結婚や家庭に回収しきれない女性経験に光を当てようとしていたことと連動し、求婚小説のジャンル性の解明に大いに役立つものである。つまり、これらの成果は、求婚小説が、一見、家父長制度に対抗しつつ「友愛結婚」のヴィジョンを推し進めてゆこうとする一方で、結婚制度の限界に極めて敏感に反応し、結婚や家庭に従属されない女性の新たな自我を模索する女性文学のジャンルであることを示唆している。南北戦争以後から19世紀末にかけて女性文学は、ケイト・ショパンやシャーロット・パーキンズ・ギルマンなどに代表されるように、結婚制度を極めて意識的に攻撃するようになるが、求婚小説とは、まさに、このような女性文学の流れの源流であることの可能性が開けてきた。これらの調査研究の成果を踏まえたうえで、2010年3月には、ニューヨーク市立図書館を訪問し、1850年代に焦点を当てて結婚をテーマにした女性文学の一次資料の入手、および、その時期に発刊されていた女性向けの雑誌を調査して結婚や女性の役割について述べた記事を集中的に収集することができた。
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Research Products
(4 results)