2010 Fiscal Year Annual Research Report
モダニズムと自伝--自己表象をめぐる理論構築の過程
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20520217
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中井 亜佐子 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 教授 (10246001)
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Keywords | 英文学 / 批評理論 / モダニズム |
Research Abstract |
平成21年度に引き続き22年度も、20世紀前半のトルコ移民女性の手記およびイギリス入女性のトルコ旅行記の調査に当たった。8月から9月にかけて英国図書館で資料収集を行い、Grace Ellison,Zeyneb Hanoum,Melek Hanoumのテクストを中心に調査した。また同時代のトルコにおける女性解放政策に関する資料も収集した。資料調査の結果に90年代以降にJacques Derridaが示したコスモポリタニズムの理論的枠組み(『友愛のポリティクス』など)を取り入れ、従来的なオリエンタリズム批評、ポストコロニアル批評、フェミニズムの議論を乗り越える展望を切り開くことができた。研究成果は2011年3月に、Francoise Lionnet(UCLA),Sheila Wong(Mauritius)を招いて開催した国際シンポジウム"Minorities and Globalism"で口頭発表した他、中井(代表者)が吉野由利との共編で出版した『ジェンダー表象の政治学』の最終章に論文として発表した。この編著は、中井がコーディネータを担当した2009年度一橋大学でのリレー講義「ジェンダーから世界を読む」を論文集として刊行したものであるが、本研究課題のテーマである近代性とジェンダーをテーマに編集したものであり、本研究の成果の一部を執筆者間とも共有することができた。22年度のもう一つの課題は、ガイアナ出身で英国在住の現代作家・詩人David Dabydeenを中心に、モダニズムとポスト圏コロニアリズムの関係、18世紀のスレイヴ・ナラティヴと現代自伝文学の関係を探ることだった。Dabydeean詩や小説の中でモチーフとして取り上げるモダニズムや18世紀のテクストと比較することによって、現代英語文学の新たな「系譜」を描くことができた。この課題の成果は一橋大学言語社会研究科の紀要『言語社会』第5号に論文として発表したほか、Open Humanities Press発行のThe Postcolonial Textの"Glocal Imaginaries"特集(2011年12月号)に論文として掲載が決定している。
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Research Products
(3 results)