2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパの南太平洋像の変容と、現代太平洋文学における主体形成についての研究
Project/Area Number |
20520219
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山本 卓 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (10293325)
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Keywords | 太平洋文学 / コロニアリズム / Albert Wendt / Epeli Hau'ofa / R.L.スティーヴンソン / 中島敦 |
Research Abstract |
平成22年度は本研究期間の最終年度となるため、過去3年間の成果のまとめとその発表を中心に研究活動をした。 本研究の目的は、ヨーロッパ植民地主義における南太平洋像の形成プロセスをイギリス文学作品やヨーロッパ思想を参照し検証すること、言説としての南太平洋に対する諸反応を20世紀後半の南太平洋作家による文学作品において探ることである。前者においては、実際にサモアから南太平洋の実情をヨーロッパに対して問いかけたR.L.スティーヴンソンを中心に研究を進めた。さらにはスティーヴンソンの著作にとどまらず、彼自身の南太平洋観を相対化する視点として、スティーヴンソンの伝記的小説を書いた中島敦を据え、受け継がれる言説としての「(南)太平洋」の一局面を明らかにした。これについては、2010年7月スターリング大学での国際スティーヴンソン学会において"Locating the Pacific : Stevenson in Japanese Literature"というタイトルで発表し、「太平洋を描く:中島敦のスティーヴンソンとスティーヴンソンのサモア」として研究論文にまとめた。 他方、上で検証した南太平洋像に対する現地作家の反応については、前年度にまとめたエペリ・ハウオファとアルバート・ウェントについての研究成果をさらに発展させた。植民地主義における権力旨関係にロボットのメタファーを援用することで、英米文学史や思想史といったより広い脈絡における太平洋文学の意義を探った。その成果め一部は「異種混交のロボット:現代太平洋作家における主体へのまなざし」という題名で、2010年10月に開催された日本英文学会中部支部のシンポジウムにおいて発表した。
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Research Products
(3 results)