2009 Fiscal Year Annual Research Report
自己検閲の文法:ハーディの中期小説に施された改稿の分析
Project/Area Number |
20520220
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上原 早苗 Nagoya University, 国際言語文化研究科, 教授 (00256025)
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Keywords | イギリス小説研究 / バーディ / 書誌学 / 草稿研究 / 本文異同 / 出版文化史 |
Research Abstract |
本研究はトマス・ハーディの中期の小説『搭上のふたり』(Two on a Tower)の原稿および活字テクストの本文異同を研究することによって、ハーディに固有の「改変の文法」の分析を目指すものである。今年度はまず、原稿358葉のうち、およそ250葉の解読を計画していた。しかし昨年度の初めに、科研費の成果報告書を執筆したところ、『カースタブリッジの町長』(The Mayor of Casterbridge)の原稿内部の改変に、これまでの研究によって見逃されてきた点が多々あることが判明したため、昨年度は計画を変更した。今年度も昨年度と同じく、計画を一部修正し、『カースタブリッジの町長』の原稿の分析を進めた。 具体的には、『カースタブリッジの町長』の原稿内部の本文改変の分析に従事することとし、ドーチェスター博物館およびドーチェスター歴史資料館に赴いて原稿の紙およびインク、ペン先などの状態からハーディの執筆段階を確定した。次いで、事後的な改変のなかでも、セクシュアリティに関わる表現の修正に焦点を当て、一連の修正が小説テクスト(最終稿)に齎した新たな意味効果について吟味検討した。 上記に加えて、今年度は、当初の予定どおり、ハーディの中期の小説の草稿を一部分析し、改変をデータ化した。さらに異同の傾向を検証し、中期の小説に顕著な、改変の規則性がいかなるものか、仮説をたてた。 本年度の研究成果は、(1)「イギリス社会とセクシュアリティ」(『21世紀イギリス文化を知る事典』、2009年)、(2)「模倣される言葉-ハーディの自筆原稿を読む」(近刊)として纏めた。
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Research Products
(1 results)