2008 Fiscal Year Annual Research Report
エズラ・パウンドの儒教受容とファシズム--「表意文字的手法」の末路
Project/Area Number |
20520222
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長畑 明利 Nagoya University, 大学院・国際言語文化研究科, 教授 (90208041)
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Keywords | パウンド / 儒教 / ファシズム / 表意文字的手法 |
Research Abstract |
本研究は、1930年代以後、儒教書の翻訳や評論の執筆により、現代西洋社会に儒教的秩序と道徳の復活を促すとともに、ムッソリーニおよびファシズムへの傾倒を強めたアメリカ詩人Ezra Poundの儒教受容とファシズム支持の連動性を分析し、また、彼の革新的詩法「表意文字的手法」が、儒教及びファシズムへの傾倒に伴い、後退する過程を明らかにすることを目的とするものである。 平成20年度には、主として、1940年出版の「中国詩篇」を対象に文献調査を行った。「中国詩篇」のもととなるL'Histoire General de la Chine ou Annales de cet Empire: Traduites du Tong-Kien-Kang-Mou等の文献を参照しつつ、中国史という題材に、1930年代のイタリア及び欧米諸地域の政治・経済・社会問題の投影を見出す作業を行った。調査の結果、明の朱元璋に関わる記述にムッソリーニへのパウンドの関心を窺うことができること、また、「詩篇60」以後に描かれる東西交渉史の細部に、王朝の盛衰と思想の関係に対するパウンドの強い関心が窺われること、などの知見が得られた。平成21年度には、『詩篇』および『詩篇』以外の文献--とりわけ、パウンドの評論、書簡等--を対象に調査を継続して行うとともに、30年代以降のパウンドの創作スタイルの変化について、さらに検討を行う計画である。また、平成20年度に得られた知見の一部を、国際学会にて発表する計画である。 なお、パウンドの「表意文字的手法」に見られる言語と視覚性の問題についての知見を深めるために、平成20年12月に、サンフランシスコ近代美術館にて調査を行った。
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