2009 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀アフリカ系作家と奴隷貿易廃止運動の文学に関する研究
Project/Area Number |
20520223
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
久野 陽一 Aichi University of Education, 教育学部, 准教授 (40242888)
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Keywords | 英米文学 / 18世紀 / アフリカ系作家 |
Research Abstract |
本年度は、研究実施計画に従って、18世紀イギリスにおけるアフリカ系作家と奴隷制度問題の全体像を把握しつつ、未収集のものを中心に資料収集をおこなった。一次資料のうち、Ignatius Sanchoが残した楽譜については、British Libraryに赴いて採譜したものを楽譜作成ソフトFinaleによって一部データ化をおこなった。また、二次資料としては、Daniel Carey and Lynn Festa, eds, Postcolonial Enlightenment(Oxford UP,2009)等の最新かつ重要な関連文献のうち未収集のものを中心に収集した。 このようにして収集した資料を整理・分析した研究成果は以下の通りである。まず、Ignatius Sanchoについて、彼が作曲した音楽作品と死後に出版されて広く読まれた書簡集の分析を通じて、黒人としては例外的にロンドンの中心部に食料品店を持つことを許された彼が抱えていた矛盾するアイデンティティの問題と、彼のヨーロッパ文化への同化の諸問題を明らかにした(論文題目「イグネイシアス・サンチョの静かな生活」、日本ジョンソン協会編『十八世紀イギリス文学研究』第4号所収、開拓社、2010年刊行予定)。また、「スターンと奴隷制度」(『愛知教育大学研究報告』[人文・社会科学編]59)において、奴隷貿易廃止運動に先立つ形で現れた、Sanchoとの交流でも知られる作家Laurence Sterneの奴隷制度に関する言説を分析した。さらに、日本英文学会第81回大会(2009年5月30日、東京大学駒場キャンパス)シンポジウム「イギリス文学とオリエント表象」においては司会兼講師として登壇し、本研究の成果を応用した「知恵と悪夢のオリエント」の発表をおこなった。
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