2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本学者F.V.ディキンズ研究-書簡公刊および日本研究における位置づけ-
Project/Area Number |
20520225
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
岩上 はる子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (40184858)
|
Keywords | 日本研究 / 来日西洋人 / ディキンズ / サトウ / 熊楠 |
Research Abstract |
幕末維新期に来日したF.V.ディキンズは英国海軍医や弁護士として活動する傍ら、日本文化への造詣を深め、初の本格的英訳とされる『百人一首』を出版(1866年)、その後も『竹取物語』『忠臣蔵』『方丈記』などを英訳し、日本文学の海外への紹介に先駆的な役割を果たした。 本研究の目的は、サトウ、アストン、チェンバレンを代表とする日本研究において見落とされてきたディキンズを、日本学者として評価し、位置づけることにある。その最大の成果はディキンズが横浜で知遇を得て以来ともに日本研究に研鑽をつんだ外交官アーネスト・サトウと晩年に交わした72通の書簡、ディキンズがイギリスに帰国後にロンドンで出会い、その日本研究において大きな助力を得た南方熊楠に宛てた51通の書簡、さらに、ディキンズがその伝記を執筆した英国駐日公使ハリー・パークス宛ての書簡およびロンドン・タイムズへの投稿記事の合計11通を翻刻し、注釈と翻訳を添えて刊行することである。 本書簡集は3カ年の計画で、英国公文書館、南方熊楠顕彰館、ケンブリッジ大学図書館、横浜開港記念館等において手稿をデジタル画像に収め、翻刻・施注および邦訳を進め、最終年度にあたる本年度は刊行に向けて出版社との打ち合わせを重ね、本文の校正、序文と解説、索引を日本語および英語で作成した。 本書はディキンズ研究にとって不可欠の資料となるだけでなく、日本文学の英訳史、日英交流史などの比較文化・文学にとっても一次資料として重要な意味をもつものである。
|