2009 Fiscal Year Annual Research Report
シェイクスピア演劇における不安定な国民像に関する考察
Project/Area Number |
20520226
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣田 篤彦 Kyoto University, 文学研究科, 准教授 (40292718)
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Keywords | 英文学 / シェイクスピア / 国民像 |
Research Abstract |
本研究はシェイクスピアの演劇テクストが初期近代におけるイングランド国家並びにイングランド国民という概念の不安定さをどのように表しているかを明らかにすることを目指している。本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1キルケやサイレンといった古典古代文学に登場する魔女たちが初期近代英文学においてイングランド人のアイデンティティを脅かす存在として描かれていることに着目し、前年度以来、特に『間違いの喜劇』と『ヘンリー4世・第一部』に関してこの点について考察してきたが、本年度はそれぞれ以下の2論文にまとめた。 (1)'Circes in Ephesus : Civic Affiliations in The Comedy of Errors and Early Modern English Identity'をアメリカシェイクスピア学会第37回大会(平成21年4月9-11日)におけるセミナーにて発表した。本論文についてはThe Shakespearean International Yearbook 10(Ashgate,2010年10月出版予定)への掲載が決定している。 (2)'Welsh Circes and'English'Heroes : Undermining the Epic Motif in Henry IV, Part 1'を基にした研究発表を平成22年10月に行われる日本シェイクスピア学会全国大会にて予定している。 2 エリザベス朝歴史劇を中心に服装に観るイングランド人アイデンティティの不安定さを論文'The Tardy-Apish Nation in the Homespun Kingdom : Sartorial Representations of Unstable English Identity'にまとめ、その一部を平成21年5月にパリ第3大学(4日)、モンペリエ大学(7日)における講演にて発表した。本論文についてはCahiers Elisabethains 78(2010年秋号)への掲載が決定している。 3『トロイラスとクレシダ』ついて「庶子と混血」、「女性の越境」、「半神」に焦点を当て、この劇においてトロイ・ギリシアそれぞれのアイデンティティがこれらによって脅かされている点を指摘し、このことを初期近代イングランド人のアイデンティティとの関連において論じた論文'Hybrids and Bastards : the Erosion of the Trojan and Greek Identities in Troilus and Cressida'を作成した。この論文については平成22年8月に行われる第34回国際シェイクスピア学会におけるセミナーにて発表を行う。
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