2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520231
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
園井 千音 Oita University, 工学部, 准教授 (70295286)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園井 英秀 九州大学, 名誉教授 (00069709)
|
Keywords | 英文学 / 宗教 / 西洋史 / 思想史 / 哲学 |
Research Abstract |
平成21年度 本研究は18世紀から20世紀にかけてのイギリス立学と社会的思想的資料の検索と分析を通してイギリス文化概念形成の過程を分析することを目的とする。本年度は19世紀から20世紀初頭のイギリス文学において宗教的主題と国民意識の影響関係を分析し、イギリスの文化意識がイギリス国民意識を総合的に統一するものとして形成された過程を考察した。具体的にはナポレオン戦争などによるヨーロッパ諸国間における帝国主義の衝突と共和主義への幻滅を、コールリッジやサウジーを中心とする文学の分析において考察し、18世紀後半から19世紀半ばの文学において共和主義的理想主義に対する限界の認識と国家意識の台頭が相互的関係にあることまた宗教的主題と国家意識の主張がほぼ同様の意義をもつことが証明された。 また、19世紀半ば以降、マシュー・アーノルド、テニスン等の文学におけるダーウィニズム等の科学思想や自然史観の展開による影響を受けた宗教的懐疑と文学的主題の葛藤がある。即ち、自然界における人間の位置とは何か、神によるディザインと進化論思想などの発展とのバッティングが必然的主題となる。特にトマス・ハーディー文学における近代的不可知論思想は、イギリス国民意識に存在する宗教的危機意識、社会的統一感覚り後退等、ヴィクトリア朝思想の特徴的な不安感を要約することを確認し、さらに、この文学的主題の葛藤は20世紀初頭イギリス文化の混乱に継続されるが、反動的に1950年代以降におけるイギリス文化と文学の宗教的主題への回帰を予測させ、この流れが20世紀の国民意識形成と一致することを確認した。 本年度は以上の研究を18世紀後半から19世紀半ばまでは研究代表者が行い、19世紀以降文学における分析は研究分担者が行った。以上の研究は国内及びイギリス大英図書館、ノッティンガムトレント大学図書館などで行い、研究成果の一部は論文及び国内学会において発表した。
|