2010 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀アメリカ小説における動物表象の科学史・文化史的研究
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20520237
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
佐久間 みかよ 和洋女子大学, 言語・文学系, 准教授 (00327181)
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Keywords | 米文学 / 19世紀アメリカ / 動物表象 / 東西文化交流 / メルヴィル / ソロー |
Research Abstract |
本年は研究年度最終年にあたり、今までに行なった動物表象に関する文献・図版、東西文化交流の研究書、作家の日記の調査を整理し論文製作を重点にし、またこれまでの研究から派生的に生じた研究会への招聘(アメリカンルネサンスと大西洋)、学会発表(PAMLA学会、日本ソロー学会)を通じて、視野がひろがり、課題自体の広がりが確認できた年であった。まず、動物表象に関しては、19世紀に政治風刺が動物表象を多用していたこと、それを可能にするアメリカでの動物のイメージの固定化、また動物の見方が文化圏の交流により多様化することを作家メルヴィルが的確に捉えていたことが確認できた。メルヴィルに関しては1昨年のエルサレム国際学会での発表をまとめる形で論文にし、投稿した。また、科学言説と文化交流により多様な動物への関心がひろまった点に関して、研究報告の形でまとめた。さらに派生的に広がった問題として、研究会での発表(メルヴィルの戦争表象一戦闘心を動物にたとえる様など)、学会発表(ハワイという島を通して考える文化交流の捉え方、エマソン、ソローの自然観)を通して、19世紀のアメリカが持つ東西、南北の結節点的役割が指摘できた。とりわけ、メルヴィルという作家の作品を研究することで、アメリカの内にいながらその文化、社会を客観視できる視点からみたアメリカ像を明らかにできた。これに関し論集の論文の一つとして発表し、また、2011年5月九州アメリカ文学会のシンポジウム講師として、その成果が周知できた。動物表象に注目して文学作品をみると文化史と科学史の影響を受けた動物描写、自然描写の変化が確認でき、その成果として論文を発表し、動物を通してみるアメリカ文化の複合性という新たな視点が指摘できた。
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Research Products
(4 results)