2010 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀イギリス小説における結婚法変遷の意味作用の分析
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20520239
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永富 友海 上智大学, 文学部, 准教授 (60305399)
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Keywords | 結婚 / 私生児 / 相続 / 土地屋敷 / センセーション・ノヴェル / 他者 / 血縁/類縁 / 女性の自伝 |
Research Abstract |
本年度は当研究の最終年度にあたり、三年間の研究成果の発表に主眼をおくことを企図した。初年度、次年度に収集した結婚法に関する一次資料の読解を踏まえ、当時の社会的・文化的言説が小説テクストの言説といかに呼応しているかをあぶり出すと当時に、それぞれの小説テクストの重層的な側面を追求するために、派生的な言説にも目配りしながら、分析の精緻化に努めた。 1(1)Jane Eyreに関しては、結婚が他者を身内化することで成立する制度であることに着目し、ヒロインが駆使する他者/身内のレトリックのイデオロギーを読み解くという手続きに加えて、ヒロインの語りを「女性の自伝」の系譜に置くことで、テクストにおけるキリスト教の言説の解釈に新たな分析の可能性を見出すことができた。 (2)「女性の自伝」については、日本英文学会のシンポジウム「Victoria朝の自伝を読む」で、バネリストとして発表をおこなった。 2(1)結婚という法律の抜け穴をかいくぐることで新たなプロットを開拓したセンセーション・ノヴェルの代表作Lady Audley's Secretでは、19世紀イギリス小説における結婚のプロットに頻出する従兄妹の問が鍵になるという視点から分析をおこなってきたが、今年度はさらに、「家庭の天使」の神話を逆手にとったヒロインの「転覆性」を、最終的に家の相続という見地から考察したとき、どうとらえるべきであるかという問題設定をおこない、ゴシック的要素を孕んだJane Eyreとの比較も踏まえながら,新たな読みの可能性を探った。 (2)その成果は、10月に開催された日本ハーディ協会の大会におけるシンポジウム「ハーディとカントリー・パウズの伝統」において、Lady Audley's Secretが「家と女性」の関係性にいかに転覆的要素を取り込んでいるかという視点からの分析という形で発表した。 3(1)すでに昨年度分析済みであったHardyのThe Mayor of Casterbridgeを、リヨンで開催されたハーディ学会においで発表した。 (2)web上での出版に際し、学会でのコメントを反映し、また発表では割愛した部分も加えて、原稿を大幅に書き直した。新しいバージョンの作成において、サセックス大学のLindsay Smith教授との意見交換をおこなった。なおこの原稿の出版は、今秋の予定である。
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Research Products
(5 results)