2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代英文学および英語翻訳文学における「ポストコロニアリズム」の表象研究
Project/Area Number |
20520244
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
早川 敦子 Tsuda College, 学芸学部, 教授 (60225604)
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Keywords | 英語翻訳文学 / ポストコロニアル理論 / 翻訳理論 / 脱植民地化 / 植民地文学 / 国家とアイデンティティ / 歴史意識 / 記憶 |
Research Abstract |
平成20年度は、本研究の初年度であるが、平成17年〜19年度の科研による研究「現代英文学が志向する『平和構築』の可能性-歴史観・政治意識・倫理の表象研究」(基盤研究C課題番号17520199)をさらに発展させたところに本研究の意義をおくものであるため、報告論文の最終章で扱ったパレスチナ文学の考察に、さらにその後の文献収集とそこで得られた知見を展開させた研究を展開した。 具体的な内容としては、惜しくも6月に死去したパレスチナの詩人Mahmoud Darwishの散文詩を中心に、Edward W.Saidの「国家とアイデンティティ」をめぐる思想を援用してパレスチナ文学の越境性と政治的な性格をあぶりだした。コペンハーゲンで行われたIBBYの国際会議に出席したパレスチナ代表の作家を介して、Darwishの英訳者であるIbrahim Muhawiとのインタビューを通してその成果についてはフィードバックを行い、その過程で、ポストコロニアル理論が文学テクストの「政治意識」を牽引するものであることが明らかになった。 本年度研究期間の後半は、具体的なテキスト分析よりむしろ、ポストコロニアル理論を「翻訳研究」とリンクさせる目的で、Translation and Power(Maria Tymoczko&Edwin Gentzler eds.)やThe Translator's Invisibility(Lawrence Venuti), Between Languages and Cultures(Anuradha Dihgwaney&Carl Maier eds.)などの英語文学圏外を射程に入れた翻訳理論の考察を行った。現代翻訳文学とポストコロニアル理論の相互作用への考察が次のテーマとして浮上した。
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