2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520248
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
松本 靖彦 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (10343568)
|
Keywords | 英文学 / ディケンズ |
Research Abstract |
平成23年度は以下のような成果が得られた。 1.本研究の補助金を用いて遂行した資料調査に基づき、ディケンズの『ドンビー父子』という作品を分析した「フローレン ス・ドンビーは父親の宝となれるのか」という論考を作成した。この作品にみられる、主要登場人物たちが距離を隔てたところから互いの心の内を覗き見るような傾向を、近代市民社会の「個」の問題と絡めて分析した。その際に「線(引き)」の問題を中心に据えて人間関係を検証した本稿は、独自の論点を提示することができた。 2.本研究の成果である「「いずれは死なねばならぬから」-『フロイトの快原理の彼岸』とディケンズ」(平成22年度)と「見世物小屋としての『骨董屋』と人形の死に様」(平成21年度)という2つの論考に、1.の論考、また新たに作成した「越境するディケンズ(の想像力)」という論考を加えて、博士論文を完成させた(平成23年11月名古屋大学国際言語文化研究科に提出)。ディケンズ研究に独自の観点を提示することができた。 3.本研究で得た知見を活かし、ディケンズの公開朗読台本「小人のチョップス氏」の日本語訳を完成した(平成24年6月出版予定)。この作品の朗読台本としての翻訳は本邦初である。なお、この翻訳の作成にあたっても、本研究補助金を用いて渡英し大英図書館で閲覧した資料に利するところが大きかった。 4.上記2.で言及した「見世物小屋としての『骨董屋』と人形の死に様」(平成21年度)で得た「女性が究極の美に高められると同時に全くの見世物に成り下がる」という観点を応用し、女性を枠にはめこむ男性のまなざしを分析した論考Moving 0ut of the Frame:Portrait Painting in "My Last Duchesss," "Jessica,"and La Belle Noiseueを作成し、「東京理科大学紀要(教養編)」第44号に発表した。
|