2008 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末「アメリカ文化圏」の構築をめぐる研究、国際小説家サークルを中心に
Project/Area Number |
20520249
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
北原 妙子 Toyo University, 文学部, 准教授 (90315820)
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Keywords | 米文学 / 米文学史 / F.マリオン・クロフォード / リアリズム / ロマンス / イタリア / ソレント / 超自然 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀末、一連の交流があった英米の文化人たち、特に大西洋の両岸で活躍した人物たち(William Dean Howells, Henry James, F. Marion Crawford, lsabella Gardner, Ouida等)の残した文化的・文学的仕事に着目し、ひとつの「文化圏」が構築されていた模様を明らかにすることを目的とする。三ヵ年をかけて上記の国際小説家たちのサークルの相互影響から、どのような文化が生じたか、そしてそうした文化圏が形成された背景について考察する。特に筆者が発掘を手がけてきたクロフォード関連の伝記・業績を詳しく調査する。 今年度は、予定の第一年目にあたり、先の作家たちを特色付けるリアリズム文学とロマンスについて、併せて再考した。「リアリズム」の概念について、どのような議論が行われてきたか探るため、The Rockefeller Library並びにThe John Hay Libraryにて先行研究を収集・検証した。資料を概観すると「リアリズム」は「自然主義」あるいは「モダニズム」と対峙され議論・定義されることが多く、「ロマンス」と別個に論じられている。この模様は学問体系としての「アメリカ文学」が確立されていく過程と緊密にかかわり、学問的権威づけの観点から「ロマンス」研究が疎かにされている観が否めない。だが、アメリカ文学は本来The Atlantic Monthlyなどの文芸誌上で小説家達が作品を競うことで形成されてきた。そこでは「ロマンス」は「リアリズム」が取って代わるべき対立概念で、「ロマンス」の影響は後々の「超自然」や大衆文化的なサブジャンルに至る。従って「ロマンス」と「リアリズム」を並列した再議論の必要性が窺われ、この論考をまとめつつある。なお、リアリズムが主流となった19世紀末に、ロマンスに代わるリアリズム以外の選択肢としてクロフォードが「超自然」の分野に進出した様子、その創作技法についての考察を2009年5月にイタリアで開催されるクロフォード没後100周年記念国際大会で報告の予定。
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