2010 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末「アメリカ文化圏」の構築をめぐる研究、国際小説家サークルを中心に
Project/Area Number |
20520249
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
北原 妙子 東洋大学, 文学部, 准教授 (90315820)
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Keywords | 米文学 / 米文学史 / F. Marion Crawford / Thomas Crawford / 新古典主義アメリカ彫刻 / イタリア / Henry James / ロマンス |
Research Abstract |
本研究は、19世紀末、一連の交流があった英米の文化人たち、特に大西洋の両岸で活躍した人物たちの残した文化的・文学的仕事に着目し、ひとつの「文化圏」が構築されていた模様を明らかにすることを目的とする。特に筆者が発掘を手がけてきたF・マリオン・クロフォード関連の伝記・業績研究を充実させるためにも、最終年の今年度は作家クロフォードの父、彫刻家Thomas Crawfordについて調査を進めた。成果は次の通り。1)伝記では、Robert Galeの代表的な評論の他に美術史や彫刻関係、美術館抄録で彫刻家への言及から、今日でも初期新古典主義彫刻家として、一定の評価を得ていることが分かった。2)クロフォードの作品をリッチモンド、ワシントン、ボストン、ニューヨークなどの諸施設で実際に見学したが、やはり今でも代表的なアメリカ彫刻家として重要視されている様子が観察できた。3)現存する書簡などから彫刻家の人脈が明らかとなり、名門ウォード家出身の妻Louisaをはじめ、弁護士で後、上院議員となるCharles Sumnerやローマで領事を務めた歴史家のGeorge Washington Greeneなどボストン・ブラーミンの支持を得て、ワシントン議事堂上の「自由の女神」像などの偉業を成し遂げた様子が分かる。ここに上記の人物たちがローマとアメリカを行き来した国際的な交友の結果、アメリカに新たな「彫刻文化」を根付かせた過程が見られ、筆者が19世紀末に国際小説家を中心に構築されたと考えていた「アメリカ文化圏」が、既に19世紀中葉、幅広い分野の人材を含む母胎を形成しはじめた様子を実証できたのは大きな収穫であった。先述した文化人の相互影響のもと、詩人ロングフェローと彫刻家クロフォードは1850年代に両者ともネイティブ・アメリカンを題材として創作をしており、詩と彫刻と異ジャンルではあるが、その表象について本年(2011年)のアメリカ学会年次大会で口頭報告を行う予定である。また彫刻家についての評伝は『白山英米文学』(第36号)に発表した。
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