2008 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学における人種とジェンダー越境表象の研究
Project/Area Number |
20520252
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
杉山 直子 Japan Women's University, 人間社会学部, 教授 (20213506)
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Keywords | ジェンダー / 人種 / マキシーン・ホン・キングストン / 花木蘭 / ヴェトナム戦争 / 越境 / チャイナタウンの女武者 / トリップマスター・モンキー |
Research Abstract |
口頭発表および加筆訂正を加え出版した「チャイナタウンの女武者キャラクターとしての花木蘭の変容」は、中国系アメリカ文学の傑作といわれるマキシーン・ホン・キングストンの『チャイナタウンの女武者』で登場する異性装のヒーロー花木蘭について、「自立する強い女性としての女武者」「少数派である中国系アメリカ人のヒーロー」としての意味を、アメリカ文化の「女戦士」の系譜の中にたどりつつ、作者キングストンが平和主義者の立場から「女武者」というキャラクターそのものに批判的になる経緯をたどったもの。『アジア遊学』掲載の「チャイナタウンの女武者--花木蘭の変容と意味」は花木蘭という実在の人物が中国、米国、日本でどのように理解、需要されてきたかに重点を置き、上記論文のイントロダクション的な意味を持つ。“From The Woman Warrior to Veterans of Peace:Maxine Hong Kingston's Pacifist Textual Strategies"は、キングストンの主要作品(『チャイナタウンの女武者』『アメリカの中国人』『トリップマスター・モンキー』『第五の平和の書』)の中で、中国系アメリカ人のヒーローの比喩としての「戦士」を、どのように反戦、平和主義と矛盾しないような方法で作中に登場させうるかというキングストンの戦略を分析した。 以上3本の論文はいずれも、中国系女性作家キングストンの「女武者」というジェンダー越境キャラクターについて、アメリカ文学、アメリカ文化のコンテクスト、および中国、日本を含む東アジアの文化伝統の中の意味を分析する試みである。女性の異性装の中でも特に「戦士」に特化したことで、逆説的に、フェミニズムと平和主義との複雑な関係という大テーマにジェンダーと人種の越境という切り口からアプローチすることを可能にした、意義のある研究である。
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