2009 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学における人種とジェンダー越境表象の研究
Project/Area Number |
20520252
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
杉山 直子 Japan Women's University, 人間社会学部, 教授 (20213506)
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Keywords | マキシーン・ホン・キングストン / 中国系アメリカ文学 / 女武者 / 越境 / ジェンダー / トリップマスター・モンキー / パッシング |
Research Abstract |
昨年度に引き続き男装した女武者の表象を中心に中国系女性作家キングストンについて、長編3作をジェンダー表象という観点から論じた論文「アジア系アメリカ人女性作家の作品におけるジェンダーとフェミニズム表象--マキシン・ホン・キングストンを中心に--」を、アジア系アメリカ人作家を扱った研究書『アジア系アメリカ文学を学ぶ人のために』の一部として執筆した(現在印刷中)。この論文では、登場人物が男装するというだけではなく、いわゆる「全能の語り手」が男性か女性か、という問題にも触れ、キングストンの男性と女性という二分法攪乱の文学上の戦略について分析した。文学における文体のジェンダーは、女性的な文体(エクリチュール・フェミニン)が存在するかどうかという論点をめぐり議論が尽くされた観があるが、キングストンの戦略は、ある程度の中国文学の知識のある読者がおのずと語り手を女性として読むという、ジェンダーだけでなく文化も越境する技巧を凝らしたものであることを指摘した画期的な論文といえる。2009年度にはこのほか、キングストンの異性装と反戦思想についての論考をさらにふかめ、2010年度開催の国際シンポジウム「ユーラシア諸国のアジア表象」(北海道大学)での口頭発表のプロポーザルを作成した(2010年7月9日に発表することが決定)。またパッシングを子どもの視点から扱った黒人作家デインジー・セナについての研究も進め、日本女性学会全国大会での口頭発表のプロポーザルを作成した(6月20日に発表することが決定)。
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