2008 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス・カナダ・日本における英語小説の商品化と「文学性」の創出に関する研究
Project/Area Number |
20520255
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤本 陽子 Waseda University, 文学学術院, 教授 (00238619)
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Keywords | 文学性 / グローバル化 / カナダ / 翻訳 |
Research Abstract |
今年度は、カナダ発の英語小説とその受容が示唆する価値観について研究を進めた。まず、カナダ文学のさらなる多様化と国際化に関するカナダ国内の一般的評価および批評の傾向を、文化的中心とされてきたトロント以外(特に西部)の視点から調査することを試みた。これにより、文学と出版のグローバル化といえる現象が顕著にみられるトロント、モントリオールに対し、西部ではヴァンクーヴァの都市文化と文学を独自のものとして差異化するなど、地域性が重視される傾向が確認された。トロント中心の多文化的文学作品が他の英語圏で広く市場に出回っている現状は、2009年ロンドン文学祭や英国図書館で開催されたカナダ文学・文化関係のイベントの内容および広報のありかたからもうかがい知ることができた。これらをイギリス現代小説の場合とも比較しつつ、文学性の構築の問題としてさらに追究していく。 日本では、1990年以降にカナダで出版された英語小説の翻訳・受容に関して調査と考察を進めた。日本の文学システム内では国語と結びついた文化規範の作用が強く、いわゆる外国文学も、国際文学賞などによって規定されるグローバルな価値とは異なる価値を付与されることが多いが、そのプロセスを論じるには翻訳研究のシステム理論が有効であると考えられる。今年度はカナダの小説の翻訳を例にこれを実践し、英語論文“Is CanLit Lost in Japanese Translation"に結果をまとめた。本論文は今年度中にTransCanadalnstituteの出版物に掲載される予定である。
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