2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代における文化の混淆の行方-文学、芸術の変容の日豪比較
Project/Area Number |
20520260
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
有満 保江 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (20097075)
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Keywords | グローバリゼーション / アイデンティティ / 文化の混淆 / ネーション / オーストラリア文学 / ナショナリズム / 多文化主義 / 主体の変容 |
Research Abstract |
研究成果 オーストラリアにおける文化的混淆に焦点を当て、文学や芸術における「アイデンティティ」の変容についての分析を行った。今年度は、民族が多様化しているオーストラリアの現在の文学的状況に焦点を当て、国家と文学の変容について探った。近代文学は本来、共通の言語、文化を基盤にひとつの国家の統一をはかるために発展したものと考えられるが、国家が多文化社会を形成するにしたがい、その近代文学の前提が崩れる。多文化が進むオーストラリアにおいて、文学が現在どのように変容しているかについて、オーストラリアの現代文学、さまざまな文化的背景をもつ移民作家の作品に焦点を当てた。報告者の主たる興味は、移民作家が、自らの「主体」をどのように捉えているか、それを作品のなかにどのように表現しているか、というものであり、ヨーロッパ、アジア、中近東などの出身者や、二世、三世の作家たちの「主体」がどのように表現されているか探った。この成果は、"Nation and Literature : Literary Possibilities in a Multicultural Society" Racism, Slavery, and Literature, Wolfgang Zach and Ulrich Pallua(eds.), 2010に収められている。また、主体を自在に変容させる手法で作品を書いた、Nam Leの作品The Boatという短編集に、文化的混淆を反映した「主体」のあらたな方向性が読み取れる。この新しい試みについては、「無国籍作家ナム・リーの挑戦:短編小説集『ボート』をめぐって」JANTA Bulletin, 2010に収められている。
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