2010 Fiscal Year Annual Research Report
ホーソーン文学における歴史と詩学の位相--独立期アメリカの精神と文化の表象を読む
Project/Area Number |
20520264
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
入子 文子 関西大学, 文学部, 教授 (80151695)
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Keywords | ホーソーン / 歴史と詩学 / 独立期アメリカ / 北アメリカ / 表象 |
Research Abstract |
(1) 本研究は、ホーソーンの中でも従来本格的な研究がほとんどなされてこなかった独立期アメリカをめぐる作品を総合的に研究するものである。当該年度は、その一環として広義の独立戦争ともいえるフレンチ・アンド・インディアン戦争に焦点を当て、『英国ノート』やスケッチ、エッセイといった、これまで研究の対象となりにくかった、扱いの難しい作品を取り上げた。なかでも、イギリスの軍人ジェイムズ・ウルフに捧げるホーソーンのオマージュに着目し、その理由を歴史や表象、詩的表現などから考察した。 (2) 19世紀当時のイギリス人は、ホーソーンの表現を借りれば「ネルソンさえあればシェイクスピアもニュートンもベイコンも不要」というほど、ネルソン贔屓であった。しかしホーソーンはネルソンを「胡散臭い偉人」と退け、ウルフを高く評価した。それは必ずしもウルフがフランスをアメリカ大陸から追い出し、結果的にアメリカに独立をもたらすことになったとだけのいう理由ではなかった。この仮説を確かなものにするため、ホーソーンの作品の精読はもちろん、『英国ノート』に描写されるスコットランドや北アメリカの、ウルフに関する古戦場や記念碑を訪れ、現地での資料収集も行った。 (3) すでに2008年度にシンポジウム「英米文学と戦争」を組織していたが、さらに充実発展させて『英米文学と戦争の断層』(関西大学出版部2011)を企画・出版した。
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Research Products
(1 results)